21世紀ゼミナール
今年の統一テーマは「“地方創生”新たな豊かさを求めて」です。その地方創生において、「活力ある日本社会」を構築し、生活の質的向上を目指す長寿時代の生き方はどうあるべきかが、1つの着眼点となっています。
今回(1/20日)の講義は、「世界の願い“がん克服”の扉をひらく」と題して、三重大学複合がん免疫法研究センターの珠玖洋教授に講演をお願いしました。
冒頭、珠玖講師より、サイエンス誌が2013年の画期的進歩として、がん免疫療法を選出したことが紹介されました。
何故がんに対して免疫療法が有効なのかについては、次の様な説明がありました。
がんの治療には、手術、放射線、薬物、そして免疫療法があります。これら4つの中で免疫療法は2つの側面から治療を進めることができるから有効というわけです。
すなわち、
Step1. がん細胞が自分自身を守ろうとする力を弱める方法…抗免疫チェックポイント
抗体療法
Step2. ヒトの免疫効果を利用してがん細胞を攻める方法…T細胞輸注療法
の両方が確立されつつあるからだと講師は言われます。
Step1.の抗免疫チェックポイント抗体療法とは、次の様なものです。
これまでの免疫療法では、免疫機能の攻撃力を高める方法が中心でしたが、最近、がん細胞が免疫のはたらきにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃を阻止していることが分ってきました。そこで、がん細胞によるブレーキを解除することで、免疫細胞の働きを再び活発にしてがん細胞を攻撃できるようにする新たな治療が考えられました。その中でも、現在は免疫チェックポイントと呼ばれているブレーキ役の部分を阻害する薬が実際の治療で使用されるようになっています。
Step2.の攻める側の開発としては、次の様なT細胞輸注療法があります。
現在、講師の珠玖先生は、三重大学複合がん免疫法研究センターのセンター長を務められています。そして、がん特異的なT細胞輸注とT細胞認識抗原のペプチドワクチンを合わせた新しい治療法の橋渡しの研究をされています。
ペプチドワクチンとは、がん細胞の目印となるがん抗原をワクチンとして投与しますと、学習能力のあるキラーT細胞(免疫細胞)に、このがん抗原を覚え込ませることができます。すると、T細胞はがん細胞を選択的に攻撃をかけることになり、より強力な抗がん作用を誘導できます。
そして、がんを攻撃するT細胞をより大量に送り込んでやろうというのが、がん特異的なT細胞輸注ということになります。
「今後の開発研究としては、がん免疫療法の複合化により、効果の高い治療を行う方法が提案されています。」ということで本日の講義は終了しました。