第3回 グローバル経済と社会保障政策

 三重大学人文学部が企画運営する四日市市民大学「21世紀ゼミ」の今年第3回目の講義は、11月2日(水)18:30~20:30じばさん三重4階研修室にて開催されました。

画像の説明



 今回は、三重大学人文学部石塚哲朗准教授に「グローバル経済と社会保障政策」というテーマでお話し頂きました。

 まず社会保障の定義ですが、石塚講師によれば、社会保障制度は、国民の「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティネットで、これには以下の4つが含まれるとのことです。
(1) 医療保険制度、年金制度、介護保険制度、を扱う社会保険。
(2) 障害者福祉や児童福祉を扱う社会福祉。
(3) 生活保護制度を扱う公的扶助。
(4) 広義の社会保障を扱う保険医療、公衆衛生

画像の説明

 それでは、この日本の社会保障制度は、世界から見るとどの様な位置付けにあるのでしょうか? 石塚講師は、所得格差の大小を示す「ジニ係数」という指標を用い、所得再配分前後の値を、横軸・縦軸にプロットした下図で示されるとしています。

 それによれば、国際的に見ると、日本のジニ係数は、所得再配分前・後ともに、OECD平均よりも大きくなっています。日本よりもジニ係数が高い国としては、アメリカ、イタリア、英国、オーストラリアがあります。

 ジニ係数とは、当初所得をベースに、家計間で発生する社会保障制度や税による所得再配分によって、所得格差がどうなるのかを示します。すなわち、ジニ係数が大きいことは、所得格差が大きくなることを示しています。日本の場合、横軸の当初所得で見てみますと、高齢化、世帯の小規模化を主な要因として、ジニ係数は上昇し、所得格差が拡大し好ましくないと言えます。

 ところが、所得再配分後では、近年では格差が縮小しています。これは、社会保障制度や税による所得再配分が上手く行っていることになります。

画像の説明

 日本の年金制度が抱かえている問題について、現在の年金制度は、「日本の高度成長時代に設計された制度である点だ」と講師は言われます。

 通常、サラリーマンは、基礎年金の上に2階部分の厚生年金保険がありますが、近年、非正規雇用の若者が増えており、厚生年金が十分に付かないことが見受けられ、これは大きな問題となっています。

画像の説明

 年金制度の持続可能性を高めるためには、年金制度にとっての与件である「経済の成長」、「雇用の拡大」、「人口減少の緩和」が重要です。と講師は言われます。

 年金制度が上手く機能するための対策ですが、特に最近は、働き方改善を進めつつあるとのことです。すなわち、高齢者や女性、若者の雇用を促進させる対策や、仕事と子育ての両立支援の強化に取り組むことです。また、年金制度においても、働き方に中立的な制度設計、働いて保険料を納付したことが給付に反映する形で透明感、納得感を高める改革が必要である、と講師は主張されました。

画像の説明