金融危機 「リチャード・クーの理論」

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 今、世界中の著名な経済学者が「今回の危機は戦後最悪の金融危機だ」と口を揃えて言ってます。ご承知のように、米の住宅バブル崩壊とともに噴出してきたサブプライム問題、ドル危機、雇用不安などが影響を及ぼしています。世界が直面しているこの危機は、旧来の経済学ではまったく対応できないそうです。

 皆さんと同じように、今後日本はどうなるのか心配している1人です。そんな時に一冊の本が目に飛び込んできました。リチャードクーの「日本経済を襲う二つの波」です。彼はこの本の中で「バランスシート不況」という言葉を使って今回の金融危機を説明しています。この考えは私にとって非常に分かり易かったので紹介したいと思います。

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 理解をしやすくするために、図に表現してみました。皆さんの家計部門に1,000円の所得があれば、その1割である100円を貯蓄に回し、残り9割の900円を消費します。景気の良い時には、企業は設備投資を進めたいので、その資金を銀行に借りに来ます。銀行は家計部門の貯金で得た100円を企業に貸し出します。すると、日本の経済規模は家計の消費と企業の消費を合わせた1,000円となります。従って、所得が大きくなれば、日本の経済規模はどんどん拡大するわけです。


 一方、不況になるとこれがどうなるのでしょうか。不況の入り口では、通常通り家計所得1,000円は、銀行に100円、消費に900円回されます。ところが企業は不況時には設備投資を控えて借金返済に一生懸命になります。すると企業の銀行からの借入をしなくなりますから、100円は銀行に眠り、結局、日本の経済規模は900円となります。1,000円から900円に縮小してしまう訳です。更に、不況が継続すると家計部門は所得が900円と下がり、これの1割の90円を銀行に貯蓄、810円を消費に回します。ここでも企業は借金返済に回り、銀行にお金を借りて生産増強などは考えません。従って、2年目の経済規模は810円に縮小します。この様に、不況に陥るとどんどん経済規模が縮小していくというのがリチャード・クーの主張です。そして、今回の不況の要因がサブプライムであるという訳です。なかなか分かり易い論理ですね。

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 それでは、このバランスシートを修復する手立ては何かということになりますが、企業による景気の回復は難しいので、政府が景気を3~5年程度かけて下支えすべきと言っています。すなわち、公共事業を中心とした財政出動による景気対策をやりなさいという訳です。その間、家計及び企業は安心してバランスシートの修復をやり、5年してバランスシートがきれいになったら、政府は政府のバランスシートの修復、つまり財政再建に向かうというものです。

 この理論、政府の景気の舵取りが全てを支配しており、よっぽど優秀な政治家でないとこの療法はなかなか難しい様に私にはおもえますが、皆さんいかがでしょうか。



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