歴史に学ぶ(No.2)-写実主義から印象主義への変遷

 先回は、1873年の金融恐慌について、それが起こった原因とそれがどのように終結したかについて述べました。明治以降に起こった4回の金融恐慌の後には必ずと言って良いほど産業革命が起こっています。前回説明した第1回目の1873年の金融恐慌は、米・鉄道建設バブルの崩壊による金融恐慌でしたが、その後には電話の発明による通信革命が興り、近代工業化の幕開けとなりました。

 今回はその1873年の金融恐慌の前後で、実は芸術の面でもこれを契機として大きな変化が起こっていますのでそれを紹介します。技術と芸術は兄弟ですので、金融恐慌で技術革新が起きるのなら芸術の面でも何かが起こってもおかしくないはずです。

 1873年金融恐慌以前ですが、絵画の世界は写実主義が全盛の時代でした。絵画における写実主義とは、対象としているものの現実の姿を描く手法です。代表的な作品に1959年のミレーの「落穂拾い」があります。下の写真からも分かりますように、額に汗して労働する農民の状況が良く窺えます。

 それが金融恐慌の後は、印象主義が台頭してきました。印象主義とは、今までにない新しい感受性を持って現実の世界に目を向けるという手法です。1876年のルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」は、モンマルトルにあった庶民的なダンスホールの男女を描いて、新しいパリの生活の華やかさを描き出しています。

このように、金融恐慌前の写実主義は、当時の貧しい生活そのものが克明に表現されていることが分かります。一方、金融恐慌後の印象主義では、当時の人々の生活を楽しむ様子を前面に出そうとしているように思えます。

 要は、金融恐慌を境に絵画の世界では、写実から印象へと大きく画法が変わった訳です。いかがでしょうか、この違い判っていただけましたか。

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