地球温暖化を考える(No.2)-極地の万年氷の融解

2007年10月にイギリスの高等裁判所は、ノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏の「不都合な真実」の映画の内容に対し、「9ケ所事実誤認している場所がある」として、中学校でこのフィルムを用いる上で是正措置を取るようにとの判決を出したことは、前月のコラムでお話しました。今月はその9ケ所の内の最初の判決内容について紹介します。

第一番目の判決内容は、「極地での万年氷の融解で、海水レベルが近い将来7m上昇する恐れがある」とする主張に対してのものです。判決ではアル・ゴアの主張は、科学的根拠に欠け、紛れもなく人騒がせな話であるとして片付けています。

それでは、アル・ゴア氏の主張を少し詳しく追ってみましょう。彼は、南極大陸の氷床と北極圏のグリーンランドの氷床が現在急激な勢いで融けていることについて次の事実に基づいて警告を発しています。まず南極大陸については、これを東南極と西南極に分けて、各々の状況を下記の様に述べています。

  • 東南極では、氷の容積全体が今では減少しており、東南極にある氷河の85%で海への流出力が加速しているとしています。更に、この氷の塊の上空で測定した大気の気温は世界中のどこよりも急上昇していることが分かったと述べています。
  • 西南極の氷床は、海に浮いているのではなく島の頂に立て掛けられた状態にあるとし、この氷の塊が溶けたり、島と繋がっている部分から外れて海中に滑り落ちたりしてしまうと、世界中で海水面が6m上昇することになると予測しています。

 一方北極圏のグリーンランドの様子を下の写真に示します。(アルゴアの「不都合な真実」より転載)

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これは1992年と2005年のグリーンランドにおける氷の溶け方を科学者達が測定した結果です。赤い部分が氷の溶けている部分を示していますが、アル・ゴア氏はこの氷の溶け方は急激に加速していると結論づけました。そして、グリーンランドのアイスドームが溶けたり崩落して海に滑り落ちたりしてしまうと、世界中の海水面は6m上昇することになると予測しています。

アル・ゴア氏は2005年に実際にグリーンランド上空を飛行機で飛んで、氷が溶けてできた水溜りが氷の上に大きく広がっている様子を自分の目で確かめています。この氷が溶けて水が溜まることは昔から知られていましたが、これまでと違うのは、現在その数も面積もずっと増えているという事実でした。

さて皆さんどうですか、アル・ゴア氏の主張は科学的根拠に欠けていると思われますか、それともイギリスの裁判所の判決が厳しすぎると思われますか。  伊藤

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