地球温暖化を考える(No.4)-南極「氷床コア」が示すデータ

20110110

 ノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏の「不都合な真実」の映画に対して、2007年10月にイギリスの高等裁判所は、「9ケ所の事実誤認」があるとする判決を下しました。今回は第3番目の判決内容について考えます。それは南極「氷床コア」が示すデータについてのクレームです。

 アル・ゴア氏は、南極では過去65万年に及ぶ二酸化炭素レベルと大気温度測定ができるとし、下記に示すように両者の関係は完全に一致していると主張しました。これに対し判決は、完全に一致するという表現はあまりにもその状況を誇張しすぎているとしています。

 南極での過去65万年に及び二酸化炭素レベルと大気温度測定は、米国の科学者ロニー・トンプソンとオハイオ大学の調査チームとによって行われました。彼らは、氷に穴を開け、長い円筒を深く差し入れて、氷の円柱を取り出します。「氷床コア」と呼ばれるこの氷の柱は、何世紀にも亘って、毎年毎年、氷が積み重なってできたものです。

 ロニー・トンプソンと彼の調査チームは、氷床コアの中に閉じ込められている小さな気泡を調べました。その年に降った雪の中に空気が入って、それが気泡となって存在しているのです。従って気泡を調べることで、年毎の二酸化炭素の量が分かります。また、酸素の同位元素(酸素16と酸素18)の割合を計算することによって、過去の各年の大気温も正確に測ることができます。この酸素の同位元素は、気温によって雪に取り込まれる速度が微妙に異なっているので、極めて正確な精密温度計となってくれる訳です。

 熟練した林業従事者は、年輪を「読む」ことができます。ロニーのチームも同じように、この珍しい“冷凍記録”についている1年ごとのはっきりした線を見て行くだけで、1年1年と時間を遡って計算をしたわけです。

 その結果、図に示すように、産業革命が始まるまでの65万年の間、二酸化炭素濃度が300ppmを超えたことは一度もありませんでした。ところが、現在は二酸化炭素濃度の上昇速度は非常に大きく、45年後には倍の600ppmまで上昇すると予測されています。一方、下の灰色の線は、この65万年間の気温を示していますが、二酸化炭素濃度とピタリと一致しています。

 イギリスの高等裁判所は、このピタリと一致するという表現を問題にしているようですが、私にはピタリと一致していると表現しても何らおかしいとは思えません。皆さんはどう思われますか。

20110110

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