世界の温暖化対応(その5)-米国のスタンス

 1997年12月京都で国際会議「気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3)が開催され、「京都議定書」が採択されました。これは、各国がそれぞれ目標を定め、二酸化炭素やメタン、代替フロンなど6種類の温室効果ガスを減少させようと取り決めを行い、最初の目標として、先進国全体で1990年比で2008~2012年までに年平均排出量を5%以上削減しようというものでした。

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 ところが、アメリカは議定書策定時には7%の削減で合意していましたが、2001年になってブッシュ政権の下、「途上国に削減目標がない。自国の経済と雇用に悪影響を与える。」という理由で議定書を離脱しました。しかし、図に示しますように、世界全体の二酸化炭素排出量のうち、最大の24%を排出しているのがアメリカです。このように、世界最大の排出国アメリカが、自国のエゴを通す限り、温室効果ガスの削減は絵に描いた餅でしかありません。

 ブッシュ政権のこの路線は、2000年に大統領選で戦ったアル・ゴア元副大統領との確執が影響しているのではないかと思えます。この時の選挙戦は、長く大変なものでした。最終的には、鍵を握るフロリダ州での投票の再集計の中断を5:4で決めた最高裁判所の判決でブッシュの勝利で終わったのでした。選挙に勝利すると直ぐにブッシュ政権は、温暖化汚染物質を制限するための政策を全て断固として阻止するという行動に出たのです。

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 多くの日本人は、ブッシュの反京都議定書の姿勢が、すなわち、アメリカの姿勢だと捉えていました。しかし、アル・ゴア前副大統領による映画「不都合な真実」の公開などを見て、決して「ブッシュ政権」が、アメリカの姿勢を代弁するものではないことを認識したのではないでしょうか。まさに、こうした多様な取組みが、複層的に行われていることが、アメリカのユニークな立場を表しているように思えます。

 一方、現在の米国のオバマ大統領の姿勢はどうでしょうか。クリーンエネルギー・環境インフラ分野への投資を軸に、景気回復・産業創出・雇用拡大を目指すと表明してきました。中でも注目されるのは、温暖化ガス削減などの観点で原子力発電を重視してきたことです。2010年2月には原子力発電プロジェクト向けに約80億ドルの政府保証供与が発表されました。検討中のプロジェクトは30を超え、中でも東芝がプラントを受注したサウス・テキサス・プロジェクトでは東京電力が資本参画し、経営に関与する方針で動いていました。

 ただし、2010年11月の中間選挙での米民主党敗北を受け、インフラ整備計画が変更を余儀なくされる可能性もでてきました。更には、つい最近2011年3月には東日本大震災が発生し、福島原発の放射能漏れの事故が、原子力発電プロジェクトの推進へ大きな影響を与えるような状況が起こりつつあります。原発への積極姿勢が変化するなか、今後の動向をじっくり見極める必要もありそうです。皆さんどう思われますか。



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