CO2の排出権と企業活動(その1)-カーボン・オフセット

 これまで4回に渡って国連気候変動枠組条約(COP)の場における各国のスタンスを追いかけて来ました。今回からは、少しCO2削減のための具体的取組みや制度について眺めてみたいと思います。まず、今回はカーボンオフセットという取組みです。

 カーボンオフセットの定義は下記の様になっています。「事業活動、生活、イベント等で、CO2の排出抑制に努め、抑制しきれない排出量分については、他の場所で実現した温室効果ガス排出削減・吸収量(クレジット)を購入することで、その排出量の一部または全部をオフセット(相殺)する取組み」。このクレジットの購入については、他の場所で排出削減・吸収を実現する事業・活動に投資すること等により、将来的に生まれるクレジットにより、オフセット(相殺)することもできるとあります。

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 しかし、分かり辛いですね。はっきりしているのは、CO2削減を義務付けられた産業界が、CO2削減を実施し、達成できなかった部分については、排出権取引を活用して未達成の部分を穴埋めするものとは少しニュアンスが違うということです。要するにカーボンオフセットは、自主的に企業がCO2削減に努めるところに意義があり、未達成部分をクレジットを購入することで相殺する訳です。クレジットを購入するという部分では、色々な排出権取引制度が絡んで来るようです。現状では京都議定書に基づくクレジット、J-VER制度に基づくクレジットが認められているようです。(右図参照)

 ただ、カーボンオフセットは、自主的な取り組みでありますので、信頼性とか透明性とか手続きが重要であると言われています。下図に示す商品の一連の流れを考えてみますと、流れの中には色々と関与する事業者が存在します。その誰もがカーボンオフセットに関わることができますので、誰が何のオフセットをするのかを明確にしないと、どうなっているのか分からなくなりそうです。

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 例えば、商品製造メーカーがカーボンオフセットに取り組む例としては、自社ビルに太陽発電システムを導入して、CO2排出抑制に努める取組みがあります。目標に到達できなかった分はクレジットを購入して相殺することが認められています。

 消費者の視点でのカーボンオフセットへの取組みの例としては、航空機利用の際のオフセットがあります。これは、航空機利用の際に常にオフセット付きを選び、航空機の利用に伴うCO2排出量を相殺しようというものです。搭乗するお客自らが、航空機から排出されるCO2排出量削減にかかる対策費相当分を寄付する仕組みです。

 ある小売業者では、カーボンオフセット付きトナーカートリッジの販売を行っています。消費する電力相当分をオフセットするものです。

 このように、カーボンオフセットの取組には、企業として積極的に環境に取組んでいるという点で好印象を与えることになります。ボランティア的な取り組みというイメージも与えます。東日本大震災で、環境どころではなくなってきましたが、長期的には我々もじっくり考えなければならない問題です。皆さんどう思いますか。



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