CO2の排出権と企業活動(その6)-国内排出量取引制度

 今回は国としてCO2削減にどう取り組んでいるのかについて見てみます。日本政府は、国内暖化対策として次の3つ、
①地球温暖化対策税(環境税)
②国内排出量取引制度
③再生可能エネルギーの全量買取制度
を3本柱に掲げて推進してきました。

 しかし、この中で一番厄介なものが国内排出量取引制度です。その理由は産業界の一部が強く反対しているからです。なぜ反対するのかと言うと、排出上限を決め過不足分を取引するキャップアンドトレード型の制度である限り、CO2排出目標の上限が明確になり、それ以上のCO2排出は、新しい設備を導入したりすることの大きなコストとなって経営に跳ね返ってくるからです。

 また、企業の目標上限をどう定めるかで、環境・経済産業両省の意見も分かれています。

 環境省は、企業ごとに温暖化ガス排出量に上限を設ける「総量方式」を原則としています。但し、電力会社には発電量当りの排出量を規制する、より緩やかな方式を特例として認めています。夏場の猛暑などで電力需要が急増した場合、総排出量を気にせず供給できるようにするための措置です。

 一方、経済産業省では、排出枠は企業の自主計画に基づき決めるとしていて、総量方式か原単位方式かを企業が選べるなど、目標設定を企業の自主性に委ねている点が環境省案と大きく異なります。(下図参照)

画像の説明

 ここで、総量規制というのは、排出上限が規制されることから、景気が良いにも拘らず、生産額をある一定以上に増やすことができなくなります。これが、企業に嫌われる原因です。しかし、総量で規制されるので、個々の設備でのCO2削減のことは気に掛ける必要がないので、この点はやりやすいということになります。

 一方、原単位方式は、一定期間内の排出量を同じ期間での生産量や生産額で割った値で規制するので、総量規制とは反対に生産量は気にしなくとも良いのですが、CO2の削減効果の少ない設備は、お金をかけて更新しなければならないといったデメリットが出て来ます。

 このように、日本で排出量取引制度の運用を可能にするには、様々な課題を抱かえており、まだまだ紆余曲折があります。更に、東日本大震災の影響もあり、スムーズな展開はまだまだ先のことになりそうです。景気動向もにらんで導入時期や制度設計などを良く話し合って進めるのならいいのですが、導入自体を棚上げすべきではないと思いますが皆さんどう思われますか。



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