東日本大震災からの教訓(その4)- 新幹線の安全神話について

 「東日本大震災において、最大震度7の巨大地震が発生しても、東北新幹線では1つの脱線も起こらなかった。これこそ、日本の新幹線の安全性を示すものだ。」と、鼻高々に吹調する人々がいます。実は、私はそれを疑問視する人間の1人です。

 今後30年以内に87%以上の確率でM8クラスの東海・東南海・南海の3連動地震が、西日本を襲うと想定されています。そのような状況の中、今回は、本当に東海道新幹線は安全であると言えるのかを少しデータを紹介しながら検討してみたいと思います。

地震の揺れ

 以下では、地震に関して、P波、S波の話が出て来ますので、少しこの部分を詳細に復習してみます。
 
 図は地震のゆれとその伝わる速さを模式的に示したものです。震源からは、速さの違う2種類の波が同心円状に伝わります。初めの小さなゆれは初期微動でP波と呼ばれます。P波の速さは約8km/秒です。一方、初期微動に続く大きなゆれは、主要動でS波と呼ばれます。S波の速さは約4km/秒で、P波の約半分の速さです。図で重要なポイントは、震源からの距離が近くなるほど、初期微動継続時間は短くなるという点です。すなわち、本震がすぐにやって来るということです。

 さて、P波、S波の予備知識が入ったところで、下図を見て下さい。図は、東北新幹線と東海道新幹線について、その走っている場所と日本を取り巻くプレート境界の位置関係を示したものです。それによれば、東北新幹線は震源地から最短でも150km離れた所を走っているのに対し、東海道新幹線は、プレート境界がすぐ傍を走っていたり、場所によってはプレート境界上を走っている場所もあります。震源地からの距離は東北新幹線に比べものにならないほど近いことになります。

 最高速度270km/hで走る新幹線が、緊急停止に要する時間は約90秒と言われています。今回の東日本巨大地震で、東北新幹線は、新幹線早期地震検知システムによってP波が検知され、次の主要動であるS波がやって来るまでに30秒間の余裕があったそうです。そのため、速度を緩める余裕があり、ほとんどの列車が100km/h以下まで速度が落とすことができ、事故は発生しなかったそうです。

 一方、東海道新幹線は、7分毎に1200人が270kmのスピードで震度7のエリアを走っており、しかも震源地までの距離は図に示すように、東北新幹線の場合に比べ、格段に近く、地震に対する危険性ははるかに増していると考えられます。

 さて皆さんは、この事実をどう判断されますか。

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