東日本大震災からの教訓(その5)-経済的損失の大きさ

 東日本大震災では、製造業のサプライチェーンの崩壊問題が大きく取り上げられました。日本の製造業のサプライチェーンは、下図に示しますように、大企業である親会社を頂点に、子会社、孫会社、さらにはこれらを底辺で支える数多くの下請け中小企業によってピラミッド構造で支えられています。これまで、このピラミッド構造の中で機能してきたのが、多数回納入で必要な量の部品在庫しか持つことができないカンバン方式でした。

製造業サプライチェーンの崩壊
 そして、今回の大震災では、底辺で頑張っていた中小企業が壊滅的な被害を受けてしまいビラミット型の三角形がダイヤモンド型に変形してしまった訳です。そのため、かんばん方式が機能不全に陥って部品の供給ができなくなってしまったという訳です。これが今回のサプライチェーン問題の根底にあります。その結果、日本のお家芸とさえされてきた、できるだけ少ない在庫で回すカンバン方式を、これからは少し考え直さなければならない状況に追い込まれているようです。

 今回の東日本大震災での被害総額は約20兆円と言われています。一方、今回の東日本大震災からの復興回復については、例えば岡三証券(株)経済調査部の保科氏は、「復興需要に支えられ、日本の経済は上昇する」と予想されています。下図がその根拠です。これは、阪神・淡路大震災、東日本大震災といった大震災と、リーマン・ショック前後の製造工業生産指数を比較したものです。大震災の場合には、半年前後で経済は回復するが、リーマン・ショックの場合は、未だに回復していないことを示す図で、大災害よりもリーマン・ショックの様な金融危機の方が恐ろしいと指摘しています。

経済的ショックと天災によるショックからの回復
 このように、日本経済は心配ないとしていますが、ただ、復興のための増税には大反対の立場を取られています。増税をするなら、日本が借金状態に陥った原因である社会保険制度や医療制度の建て直しのために増税すべきだという訳です。また、現在の日本にとって、一番大きな問題は、円高であると指摘します。政治が混乱している場合ではない、円高対策の手を直ちに打つべしと言われます。同感です。

東海・東南海・南海大地震のおこる危険性

 ところで、マグニチュード8クラスの東海・東南海・南海大地震が、30年以内に87%の確率で起こると言われています(右図参照)。この地域には大都市が沢山あるので、その被害は今回の5倍の100兆円になると推定されています。ここ数年内に発生すれば、本当に日本沈没です。

 それでは、我々中小企業は一体どう対応したら良いのでしょうか。1つの方策として、今、BCP(事業継続計画)が注目されています。それは、自分自身の会社に見合った危機管理マニュアルを作成し、被害を最小限に留めるという概念です。自分の身は自分で守るということですが、皆さんどう思われますか。






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