東日本大震災からの教訓(その8)-想定外で済まされない福島第一原発事故

 未だにその影響を引き摺っている福島第一原発事故。地震が起きていた時に原子炉そのものは停止していました。しかし、下図に示す再循環ポンプ、給水ポンプ、循環水ポンプという冷却用ポンプが全く機能しませんでした。そして、遂に燃料棒のメルトダウンという大事に至りました。

地震による福島原発被災状況

 東京電力は、社内報告書で無責任な「想定外」を繰り返すのみですが、同志社大学の山口教授は、福島第一原発の事故原因は、大きく三つあると指摘します。第1は、非常用ディーゼル発電機を防水構造にせず、海岸際のタービン建屋内に設置するという配置設計上のミス。第2は、原子炉の設置高さの設計ミス。第3は、非常用電源が動かなくなった時の「隔離時復水器」という最後の砦を活用できなかったミス。

 どうみても、第1と第2の原因が人災であるように思われて仕方ありません。そこで、これについて詳細に追ってみます。
 
 事故前後の外観写真を見て下さい。上段が地震前、下段が地震後の写真です。写真の上部には四角い形をした原子炉建屋が4台並んでいますが、その手前の海岸寄りの部分を見て下さい。ここに冷却ポンプや非常用電源が設置されていましたが、津波によって根こそぎ持って行かれた状況がはっきりと観て取れます。

福島原発事故前後の外観写真

 同じ様に15m前後の津波を受けながら、片や深刻な事態に陥った福島第一原発と軽微なトラブルで済んだ東北の女川原発。何が明暗を分けたのでしょうか。福島第一原発が敷地の高さを海水面から10mに設定していたのに対し、女川原発は15mの高さに建設していたため、致命的な打撃を避けられたことです。

 東京電力は、地盤の強度や原子炉を冷やす海水の取り入れやすさを考慮した結果、図に示しますように地表から25mも土を削って原発を建設したと言われています。しかし、日経新聞によれば、計画に携わった元東電幹部は、「違う建て方もあった」と、津波対策を軽視してきたことを認めているとのことです。

 台地を削らず、建屋の基礎部分を25m下の現在の地表となっている泥岩層まで深く埋めれば、地震と津波の両方の対策になったかも知れない」悔やんでいるそうです。

女川原発は軽微なトラブルで済んだ

 この様に、原子力発電所を設置する際に、津波を予測して冷却ポンプを高台に設置しておくべきだという意見は出ていました。なぜ高台に設置しなかったのでしょうか。それはお金の問題が絡んでいたのです。現在も原発のトラブルは続いています。このせいで、現在地震、津波、原子力トラブルの3重苦に喘いでいる人々が、十数万人います。

福島第一原発の立地

 これは、はっきり言って天災ではなく人災です。想定外などというのはとんでもないことです。皆さんどう思われますか。



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