福島原発事故による混乱(その5)-核燃料リサイクル問題の行方

 現在全国には図に示すように原発は50基あります。これら既存の50基については、すべて廃炉にするのか、現存維持で行くのか、考えが分かれるところです。

 現存維持を選択した場合、原子力規制委員会設置法に盛り込まれた「運転から40年経過した原発を原則廃炉とする」ルールを厳格に運用すると、運転開始から40年たった原発は3基、2020年までには14基、30年までには32基になります。

 40年廃炉を巡っては、ルールを徹底すれば、30年の原発比率は最大でも15%にとどまるなど、今後のエネルギー政策に大きな影響を与えることになると言われています。

 また、東日本大震災以降、原発敷地内にある活断層が、再稼働を阻む大きな要因として浮上しています。国のルールに照らせば、原子炉建屋の真下に活断層が存在する場合にも、原発は廃炉に追い込まれます。

日本全国の原発

 ところで、原発の廃炉を進めるにしても、更には30年後には原発ゼロを選択するにしても、これまでに発生した使用済み核燃料や放射性廃棄物をどう扱うのでしょうか。道は2つしかありません。すなわち、「直接処分」か「リサイクル」です。

 直接処分とは、使用済み核燃料を頑丈な容器に入れて地下に埋めることです。一方、リサイクルは利用可能なプルトニウムなどを分離し、残った高レベル放射性廃棄物を容器に入れて埋設することです。(朝日新聞HPより転載)

使用済み核燃料のゆくえ

 直接処分の選択を考えてみますと、これまで日本は使用済み核燃料も資源として再処理し、プルトニウムとウランを回収してリサイクルする核燃料サイクル政策を取って来ました。従って、直接処分は全く予想していなかった訳で、直接処分を行う場合に必要となる最終処分場の場所や方法は決まっておらず、これから原発の使用済み核燃料を地中に埋める究を開始するというレベルなのです。お粗末な話です。

 一方、リサイクルの選択については、原発がこれからも存在して稼働するという条件で成立します。しかし、東日本大震災以降、青森県六ケ所村の再処理工場も試運転で止まったままで、大きな不確実性リスクを抱かえて、ビジネスが成り立つのかという疑問が出てきます。更には、リサイクルの選択が無くなると、高速増殖炉「もんじゅ」の開発も中止すべきだということになります。

 もんじゅは、原発から出る使用済み核燃料を再処理し、回収したプルトニウムなどを燃料とし、使った以上の燃料を作れるということから、核燃料サイクルの中核となる存在でした。(「原発入門講座」より引用)

拘束増殖炉のしくみ

 1995年8月に発電を始めましたが、同年12月に炉心冷却に使うナトリウムが漏れる火災事故が発生しました。合計で16年以上も停止し、これまでの発電日数は約44日しかありません。ナトリウム漏洩事故後、虚偽報告や情報隠しも発覚し、抜本改革のため、組織改編が実施されました。結局、事故を防ぐための改造工事まで約10年かかり、試運転再開まで14年以上を費やしてしまいました。

 高速増殖炉の研究を始めて40年以上経ちますが、実用化の目途は立っておらず、2012年度までに投じた予算は2兆円を超します。もんじゅだけで1兆円に迫り、政府の事業仕分けでも必要性が疑問視されました。民主党内からも廃炉を求める声が強まっており、着工から約27年のもんじゅは、古さが常に指摘されています。

 このように使用済み燃料の処理の問題は泥沼化する様相にありますが、皆さんどう思いますか。

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