日本のエネルギー問題(その3)-シェールガス革命に沸く米国

 10年前までは、石油は枯渇しつつありあと50年程度しか保たないということが頻繁に言われていました。しかし、最近は、米国でのシェールガスや日本近海でのメタンハイドレードなど天然ガスが地球にはまだまだたくさん存在することが判り始め、何か状況が一変してしまった感があります。

 米国では1990年代から新しい天然ガス資源としてシェールガスを重要視して来ました。そして、岩盤に大きな割れ目を作って採掘する技術が2000年代に確立したことで生産量が増え、2010年には天然ガス国内生産の23%に達し、これが2035年には49%まで上昇すると予想されています。

 シェールガスは、下図(ウィキペディアより転載)に示す様に、通常の天然ガスよりも深いところにある頁岩層(Gas-rich shale:けつがんそう)に含まれています。

 シェールガスは、フラッキング(水圧破砕)という技術などを使って採掘されます。具体的には、シェールガスを含む頁岩層 (Gas-rich shale) に水平にパイプを入れ、高水圧で人工的に割れ目をつくり、ガスを採取するのです。

シェールガス採掘方法

 米国が最も早くこの手法を取り入れ、シェール革命という言葉を生み出すまでに至っています。シェール革命とは、米国が豊富なシェールガスを手に入れ、これにより企業の生産コストが下がり、生産拠点を再び米国内に戻す企業が増えることを言います。これによる米国の経済効果は、年間で約11兆6400億円に達すると推定されています。

 米国が国防予算の大幅削減を進めるなかで、「エネルギーの対外依存度の縮小が新たな外交上の大きなテコとなりうる。」との見方ができます。

 ところで、地中の頁岩に含まれるシェールガスは、米エネルギー情報局 (EIA) による主なシェールガス層の分布図(ウィキペディアより転載))によれば、世界合計で206兆立方メートルにもなります。米国やカナダの他、欧州やアジア、中南米にも豊富なガスが眠っています。

世界のシェールガス層分布

 世界各地でのシェールガス開発は、日本にとっても天然ガス調達コスト削減につながる可能性があります。シェールガスは、これを液化処理してLNGになりますが、従来型の天然ガスに加え、シェールガスが供給されれば、日本はLNGの調達先の多様化や価格交渉力の向上が期待できます。

一方欧州では、環境問題がシェールガス生産のハードルになっています。ポーランドに次いで有望とされるフランスは、水質汚染など環境への配慮から、フラッキングを全面禁止しています。

 フラッキング(水圧破砕)には、一つの坑井に多量の水(3,000~10,000m3)が必要となり、水の確保が重要となっています。また用いられる流体は水90.6%、砂(プロパント8.95%)、その他化学物質0.44%で構成されることから、流体による地表の水源や浅部の滞水層を汚染することが判り、排水処理が課題となっています。実際に、アメリカ東海岸の採掘現場周辺の居住地では、蛇口に火を近づけると引火し炎が上がる、水への着色や臭いがするなどの汚染が確認されるようになり、地下水の汚染による人体・環境への影響が懸念されています。

 以上見てきた様に米国のシェールガス革命、色々な功罪が見え隠れしていますが、皆様どう思われますか。

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