日本のエネルギー問題(その5)-固定価格買取制度の波紋

 再生可能エネルギーの固定価格買取制度が、平成24年7月1日から開始されました。買取りの対象となる再生可能エネルギーとしては、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの5種類です。

 日本国内に異常ブームを起こしたこの固定価格買取制度、これは一体何なのかを少し追ってみました。制度の概要を下図に示します。

再生可能エネルギー特措法の概要



 これによれば、電力会社は、再生可能エネルギーの発電者から要求があった場合、法律によって一定価格で一定期間、発電した電気の買取りをしなければなりません。また、通常より負担が多くなる部分については、賦課金(サーチャージ)として電気利用者から電気料金と合わせて回収することができることになっています。従って、電力会社が本制度の導入で損失を被ることはありません。制度が上手く運営されなければ、電気料金の高騰という形で国民の生活にそのしわ寄せがきます。

 再生可能エネルギーの買取価格は、エネルギーの種類や発電設備の規模などに応じて決定されるとのことです。買取制度スタート時の平成24年度の買取り価格は、下表に示します様に、太陽光42円(10kw以上)、風力23.1円(20kw以上)、水力25.2円(1,000kw以上30,000kw未満)、地熱27.3円(1,500kw以上)、バイオマス33.6円(未利用木材燃焼発電)となっています。石油、石炭、天然ガス、原子力によるエネルギーで決まっている現在の電気料金25円/kwhに比べると、太陽光、バイオマスは大分高い値に設定されています。美味しい言葉で再生可能エネルギー発電事業への参画を煽っているのが読み取れます。

 

再生エネルギー買取価格

 ここで、再生可能エネルギーの固定価格買取制度がどうしてできたのかを考えてみます。日本にはエネルギー源がほとんどないことから、これまでは石油・石炭・天然ガスを輸入してエネルギー全体の約75%を賄ってきました。残りの約15%は原子力です。そんななか、H23.3.11に東日本大震災で福島第1原発の事故が発生し、日本の原発の稼働が縮小の方向で見直される事態となりました。再生可能エネルギーの開発は、原子力の代替エネルギーとして急がなければならない事態に至っています。その様な状況の下、日本政府は再生可能エネルギー固定価格買取制度を推進することになったものと思われます。

資源エネルギー庁発行パンフレット

 特に、中小企業に対しては、固定価格買取制度とグリーン投資減税を抱き合わせることにより、制度の浸透を図ろうとしました。具体的には、これまでのグリーン投資減税では、再生可能エネルギー利用設備を取得しようと考えている企業に対し、設備取得税の7%相当額の税額控除、普通償却に加えて取得額の30%相当額を償却できる特別償却を認めてきました。今回固定価格買取制度の導入を機に、これまでの優遇措置に加え、100%の減価償却も可能としたのです。これにより、制度が開始される平成24年度に大きな利益の出ている会社は、非常に安価なコストで再生可能エネルギー利用設備を導入できることになりました。形の上では利益の出ている会社は節税と同時に利益まで得られることになったわけです。

 しかし、これは見方を変えると、平成24年度に利益を出していない一般の中小企業にとっては、この固定価格買取制度を利用して再生可能エネルギー利用設備を導入しビジネスをやろうとしても、設備導入にともなう節税対策が上手く行かずあまり儲けに繋がらないように見えますが、皆さんどう思われますか。


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