日本のエネルギー問題(その7)-太陽光発電の長所・短所を徹底追及

 太陽光発電の長所は、資源量としては無尽蔵に存在し、しかも、枯渇の心配は事実上ないという点にあります。おまけに、太陽光発電は、発電時に二酸化炭素の排出もありませんので、環境への負荷も小さいと言えます。

 太陽光のエネルギーが一体どれ位の規模なのかを以下少し計算してみます。

 地球規模で太陽光エネルギーの大きさを表現すると、「地球全体がたった1時間で受け取る太陽光エネルギーは、1年間に全世界で使用されるエネルギーの総量に匹敵する。」となります。これを日本に限定して太陽光エネルギーの大きさを表現すると、「1日の太陽エネルギーは、1年間に日本で消費されるエネルギーの100倍に相当する。」と言い換えれます

 これを出発点として、色々な試算が可能となります。まず、太陽光パネルでの変換効率を10%とすると、1日の太陽エネルギーは丁度1年間に日本で消化されるエネルギーの10倍になります(100倍×0.1=10倍)。

 従って、日本の国土の10%に太陽光パネルを敷き詰めれば、1日の太陽エネルギーで1年間に日本で消化されるエネルギーの全てを賄えるという計算になります(10倍×0.1=1倍)。

 そして、日本の1年間の総消費電力量は、約10,000億kwhrですが、そのうち60%がモータ、照明が14%、電熱が10%、IT機器が5%、その他が15%となっています(下図参照)。

2005年の総電力消費量

 我々の生活に大きく関わる照明、電熱、IT機器は総電力の3割ですから、国土の3%の面積に太陽光パネルを敷けばこれらを賄える計算になります。

 一方、NEDOが2009年にまとめた「太陽光発電ロードマップ」によりますと、日本では2億183万kwの設置が可能で、年間の発電量は単純計算で2183億8000万kwhrとなり、日本の電力の20%を賄なえるとしています。

 これらが今、日本における太陽光パネル設置に関する展望でしょうか。

 次に短所を見てみます。現状では発電コストが高くなるという問題があります。太陽光発電のコストは、太陽光パネルおよび周辺機器の製造費、設置費、費用借入れ金利分などをもとに計算されており、NEDO再生可能エネルギー技術白書では、住宅用1kwhr当り37~46円という数字が紹介されました。ちなみに、石炭や天然ガスを使った火力発電のコストは1kwhr当り10円以下です。

 また、夜間に発電できないこと、曇や雨の日には発電量が下がることも太陽光発電の大きな短所です。つまり、電力需要の変化に対して、発電量を自在に調整することができません。

 下図のグラフは、1日の中での電力需要の変動とその対応を示したものです。グラフの赤線は、ある1日の中での電力需要の量の変化を示しています。グラフの形は曜日や季節、その日の天候によって変わりますが、1日の中では概ねこの様な変化をします。

日中電力需要の変動とその対応

 グラフを見ると、早朝は電力需要が少なく、6時を過ぎると需要が急増、午後にピークを迎え、夕方以降は需要が減少して行くことが解ります。この様な変動に対応するために、各電力会社では、主に火力発電によって発電量を調整しています。また、水力発電のうちの「貯水池式」「揚水式」「調整池式」も、日中の発電量調整のために利用されています。

 また、一定の出力で運転されるものとして、これまでは原子力発電と「流れ込み式」の水力発電がありました。原子力発電は今後どうなるのか判りませんので、火力発電が一定部分を担うことになると想定されます。

 そして太陽光発電は、これまで火力発電が担ってきた電力量調整役に廻ることになりますが、太陽光では安定的供給が見込めません。太陽光発電の割合が少ないうちは問題ありませんが、電力需要の20%を賄うほど太陽光発電を導入すると、調整しきれない場合が出て来る可能性があります。その場合、電力の安定供給が揺らぐことになります。

 この様な長所・短所を持つ太陽光発電について皆さんどう思われますか。

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