日本のエネルギー問題(その8)-太陽光発電設備投資の明暗

 再生可能エネルギーの固定価格買取制度が平成24年7月から開始され約1年たちました。
経済産業省によると平成25年2月までに大型火力発電所で数期分にあたる166万kwの設備が発電を始めたそうです。買取り対象として国から認定を受けた段階の設備は1,300万kwに達していますので、まだまだ13%程度の稼働率です。

 全量買い取り制度の対象は風力や水力などもあるわけですが、現段階で政府から認定を受けた設備の9割超が太陽光発電で、「太陽光偏重」が鮮明になっています。また、メガソーラーの建設ラッシュの陰で、偏重のひずみも生まれているそうです。

 なぜ太陽光への一極集中が起こったのでしょうか。それはドイツの約2倍という世界的にも割高な電気の買取価格が主因のようです。発電所建設の初期投資を10年程度で回収でき、20年間同じ価格で売電できますので、利回りの良い投資対象として、大手企業や海外ファンドの参入が相次ぎました。

 しかし、再生可能エネルギーの導入による色々な問題も各地で発生しています。

 例えば、太陽光発電の申請が集中する北海道では、つくった電気を受け入れる送電線が不足する問題が起きています。また、風力も発電事業に適した風が吹く地域の6割以上が北海道と東北に集中していますので、再生エネルギーを関東などの大消費地に届ける送電線の増強が必要です。本土でも、放棄された農地を活用することが考えられましたが、農地利用法による規制により、太陽光発電のために利用できないという規制の問題もでてきました。

 ここで、太陽光発電の設備規模と価格の目安を調べてみます。

ソーラーハウス



 太陽光発電システムに使用されるパネル1枚の寸法は概略900mm×1,600mmで出力は200w程度です。家庭用太陽光パネルは25枚程度が使用され、5kw程度の出力が得られます。この発電システムの価格は250万円程度です。


工場用太陽光パネル




 一方、工場用太陽光パネルの出力は10kw以上となり、多いのが50~100kwです。この場合の価格は1,300万円程度です。






メガソーラー




 最近は、空地等で使用されるメガソーラでは1Mw以上の出力を対象としており、国内最大級では20Mwも登場しています。恐らく億単位の費用になりそうです。





 一番気になることは、ちゃんと採算は取れるのかということです。採算がとれますという具体的計画案が示されていましたので紹介します。50kw太陽光発電システムを投資額2千万円で購入したケースです。

・多結晶太陽光パネルで、公称最大出力240w、変換効率14.92%です。
・売電収入は、売電単価を37.8円/kwhに設定して1年目で220万円となります。
・支出合計の内訳は、
 ①メンテナンス費用(1年目は2回行う。)
 ②修繕積立金
 ③保険支払額(1年目はプレゼント)
 ④設備の資産償却税(定率法で算出。17年までの間で金額が減って行く。)は、1年目で40万円です。
・従って年間利益は180万円です。
・これだと投資額の回収期間は11年前後、単純利回りは平均8.5%前後と、非常に魅力的になっています。

 このような試算は、固定価格の買取り期間を20年とし、初期の設備投資の回収期間を約半年分の10~11年に設定して、残りの10年間でじっくり儲けて下さいというものです。通常、設備回収期間は、4~5年としてメリット計算をしますが、ここでは何と2倍の10年かけて回収させます。しかし、私には運用期間が20年と余りにも長いのが気になります。また最近、色々な問題が取りざたされています。20年間使用した後に、その残材の処理に結構費用が掛かるのではないかと言われています。また、設備の使用途中での補修費も予想以上に掛かかるようです。

 日本においては、初めての試みであり、私には思惑通りに事が運ぶのかどうかという思いがしないでもありませんが、皆様はどう思われますか。

 

コーディネーター's BLOG 目次