日本のエネルギー問題(その10)-主役に躍り出たリチウムイオン電地

 今、至る所でリチウムイオン電池が登場します。再生可能エネルギーの蓄電池しかり、ハイブリッド車でのバッテリーしかり、更には携帯、パソコンのバッテリーとしても登場してきます。

 化学電池には、1次電池、2次電池(蓄電池)、燃料電池、特殊電池の4つに大別できるそうです。今回取り上げる蓄電池は、2次電池に区分されるもので、放電してしまった活物質を再びもとの状態に再生(充電)することにより、繰り返し充電・放電できるものを言います。

 乾電池の様に、放電のみを行って活物質が消費されてしまうと、その電池の寿命が終わってしまう1次電池とは、大きく使い勝手が異なることが分かります。

 我々が携帯電話やパソコン用電池として使用しているのは、正にこの蓄電池です。近年は、電気自動車の電源として使われるなど、大容量化が進みつつあり、また量産化によって生産コストも下がって来ています。

二次電池のエネルギー密度比較



 この蓄電池には、右図に示します様に、色々な種類があります。古くから使用されている代表的なものに「鉛蓄電池」や「ニッケル・カドミウム蓄電池」があり、最近実用化されてきたものに、ニッケル・水素電池やリチウムイオン電池があります。この中で、下図で小型化・軽量化という観点から眺めると、リチウムイオン蓄電池が他を引き離しており、現在最も注目されているのが理解できます。

  2~3年の内には、リチウムイオン電池を利用して、例えば、ビル1棟分の電力を賄うような規模の大きな蓄電システムが実現すると考えられます。課題は、リチウムイオン電池の材料として、希少な金属であるコバルトが使われていることです。但し、コバルトを使用しない方式の電池の開発も進められています。あるいは、国内でのリサイクルの徹底化によって、この問題は克服できるかも知れません。


 リチウムイオン電池は、リチウムイオンが炭素素材とコバルト酸リチウムの間を行ったり来たりしているだけで、化学反応は起きていないところに大きな特徴があります。そこのところをもう少し詳細に、その仕組みはどうなっているのかという点から眺めてみます。

 一般的なリチウムイオン電池は、正極側にコバルト酸リチウム、負極側に特定の結晶構造を持った炭素素材を使います。リチウムイオン電池は、プラスの電気を帯びたリチウムイオンが、コバルト酸リチウムと炭素素材の間を行ったり来たりするのに伴って、電子が回路を通って正極と負極の間を行き来することになり、回路に電流が流れる仕組みです。

充電中




 充電中は(左図)、外部の電極に繋いで、正極と負極に電位差をつくる(電圧をかける)と、正極から負極へと電子が移動して行きます。これに伴って、リチウムイオンも、本来なら安定であるコバルト酸リチウム側から炭素の側へと移動します。



フル充電に到達





 
 フル充電に到達すると(右図)、リチウムイオンは炭素の層の間に挟み込まれて留まっている状態で、回路を繋がなければ、この状態が維持されます。







放電中



 放電中は(左図)、回路を繋ぐと、炭素の層の間に留まっていたリチウムイオンが電解質を通ってコバルト酸リチウムの方に移動します。リチウムイオンにとっては、炭素の間に挟まれているよりも、コバルト酸リチウムの層に挟まれている方が安定した状態にあるため、この様な移動が起きます。これに伴って、負極から正極へと、電流を通って電子が移動します。電子は電解質を移動することはできません。この電子の移動が電流に他なりません。



完全に放電






 完全に放電した状態では(右図)、リチウムイオンはコバルト酸リチウムの層に移動し、安定しています。








 リチウムイオン電池は、現在、太陽光発電の蓄電池の他に、ハイブリッド車や電気自動車の電池としても、その活用が期待されています。さあ、リチウムイオン電池の時代が来るのでしょうか。皆さんどう思われますか。

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