米国シェールガス革命の裏側(その2)-ペンシルべニア州での飲み水異常騒ぎ

 今回から、インタビューの旅を追っかけてみたいと思います。まず作者は、自らが住むペンシルバニア州ミランビレの近くにあるデミックという村を訪れました。デミックではキャボットという石油・ガス会社が掘削を行っており、すでに40の井戸が掘られています。しかし、ペンシルバニア州の環境保護局は、「この地では環境問題は全く起こっていない」と表明しているとのことです。
image image


image

 作者はこの村に住むパット・ファネリという女性を訪ねました。パットの家の周りには写真の様な井戸が10もあり、飲み水が全て駄目になってしまっていました。パットは、次の様にインタビューに答えています。「ガス会社の人間がここを訪ねて来た時に文句を言ってやりました。そうしたら、ガス会社の人間 は、飲料水に何等問題はないと主張したので、飲み水をガス会社の人間に差し出し、これを飲んでみなさいと言ってやった。するとガス会社の人間は飲むことを拒否しましたね。」ガス会社の対応のまずさが目に見えるようです。また、パットの周囲の家でもやはり飲み水は駄目になっていました。

image



 次のインタビューの相手は、ロン・カーターとジーン・カーター夫妻です。ロンとジーンの家の飲み水からは、メタン、エタン、プロパンといった天然ガスが泡となって吹き出してくるそうです。2人はガス会社に対し、「掘削が行われる以前40年間は何もなかったのに、掘削が行われた後は飲み水が最悪の状態になってしまった。」と文句を言いました。するとガス会社は、「それじゃあ、我々ガス会社側に過ちがあることを証明すればいいじゃないですか。」と言って帰ったそうです。この様に、米国では住民側がガス会社を訴えようとする場合、ガス会社側が間違っていることを、お金をかけて証明しなければならないのです。これは何かおかしいではありませんか。
image image



 次に作者が会ったのは、ドーマ・フィオレンチノという女性でした。ドーマの家では、飲み水用の井戸が掘られているのですが、地下のシェール層を破壊した際に、染み出てきたガスが、井戸のところに溜まり、爆発事故を引き起こしました。これはテレビニュースでも報道されました。
image image



image
 次は、デビー・メイという女性です。デビーの家には、写真に示す様に飲料水のタンクから2m離れた所にガス井戸があります。飲料水は色が付き金属のような味がするし、土の色は泥の様に茶色くなっていました。先日、科学研究所から人がやって来て、「その水を飲んではいけない、その水でシャワーをしてはいけない、その水で洗濯をしてはいけない」と忠告して行ったそうです。さらに、飼っている猫や馬の毛が抜け落ちてしまい、食べたものを戻すようになっていました。これに関して、デビーはキャボット社からレポートを受け取りました。それによれば、「あなたが洗濯石鹸を使い過ぎたので、動物が病気になってしまったのです。そして、猫の毛が抜けたのは電信柱に登って電気に触れたことも原因している。」と訳の分からないことを言って来たそうです。デビーは、動物の次は人間だと感じ、息子が水を飲んだために、いずれ病気になるのではないかと心配しています。
image image


image



 次に、ある家族をインタビューしました。ガス会社と非開示契約をしているので、カメラに顔を見せることができません。この家族は、飲料水用井戸にキャップをし、もうその井戸を使用できないようにしています。キャップをする理由ですが、もしその井戸が開けっ放しになると爆発を引き起こし、家に火をつけることになってしまいかねないと恐れたからです。

image




 別の家族は、作者に汚れた水の容器を手渡し、分析して欲しいと頼みました。この家族は、「汚染水はキャボットガス会社が非合法的に捨てたものだ。」と主張しています。



 ペンシルベニア州のデミックでのインタビューは終了しました。作者は、自分の住んでいる近くを流れるデラウェア川の将来が心配になって来ました。デッミックを見た後、これでは永遠に川が崩壊してしまう、何とかしなければならないと真剣に考える様になりました。そして、ガス会社との土地リースの契約サインを断ることにしました。

 今回のブログでは、ペンシルベニア州では、飲み水の中に化学成分やガスが混じり、病気や爆発事故が現実に始めていることを見て来ました。作者は土地をリースして大金を貰い、環境破壊に加担するのをきっぱりと断ったのです。皆さんであればどうしますか。
コーディネーター's BLOG 目次