米国シェールガス革命の裏側(その5)-フラッキング施設の概要

 シェールガス掘削に欠かせないフラッキング(水圧破砕)では、地下3,000メートルほどの井戸を掘り、ガスが閉じ込められている硬いシェール層に高圧の水圧をかけて割れ目を入れます。破砕後は0.5%~2%ほどの砂粒状の物質を化学物質と混ぜた大量の水を注入してシェールガスを水と一緒に取り出します。大量の水の中に添加する薬剤にはベンゼンやメタン、プロパンなどの発がん物質や、有害物質が含まれており、これが大きな問題を引き起こしているのです。

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 この様なフラッキング井戸には、いくつかの典型的な構造物が備わっており、これについて以下紹介して行きます。

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パート1.ドリルリグ

 ドリルリグは穴を掘る機械で、地上には写真に示すデリックタワーが設置されます。ドリルリグは、3~4週間かけて運転され、穴は3kmに及びます。この作業工程では、井戸毎に1,150台分のトラックが物資運搬に使われます。その内の400~600台が水の運搬用のみに使われます。水圧をかけるフラクチャリング用の水です。ところが、200~300台分の水、すなわち半分の水が戻って来るのみで、半分は地中に放置されてしまいます。そして、このことが色々な問題を引き起こす要因になっているのです。

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パート2.大きなピット

 写真はピットでフラッキングに用いられた水を貯めておくための貯水池の様なものです。フラッキングに使われた水が運び出されて別のどこかへ持ち去られて処理されるまでの間使用されます。ピットは、通常の土質、粘土質、石灰質でできているため、ピットに溜められた水の多くは、土の中に戻ってしまいます。このことも土壌を汚染する原因となっています。


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パート3.蒸発噴霧器

 フラッキングに用いられた水は、1つの井戸でトラック200~300台分に登ります。これらをきれいに処理しなければなりません。手間をできるだけ省くために、企業側は蒸発噴霧器を導入したのです。ピットに貯めておく期間に、大気中に水を噴霧してやります。そうすることによって、水をより速く蒸発させ、処理する水の量を軽減できるのです。しかし、水は毒性を持っているので、それは酸性雨となって、その地域の環境を害します。

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パート4.通気

 各々の井戸のある場所には、小型の精製装置と貯蔵ユニットが置かれており、これらはセパレータと呼ばれています。ガスが地上に上がって来た時、それはガスと水が混ざり合っています。このうち水はセパレータで100℃に加熱されるので、ベンゼン、トルエン、キシレン等の毒性揮発性有機化合物を含んだ水蒸気が空気中に解放されます。一方、ガスの方はパイプラインへ送られ、次の精製工程へと進みます。おわかりの様に空気中に毒性を持つ水蒸気を開放することが非常に問題なのです。

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パート5.濃縮タンク

 フラッキングに用いられた水は、濃縮されて使用不可能なレベルの低級ジェット燃料に変わっています。それは、揮発性の有機物を直接大気に24時間排気している危険極まりないものです。ガス井戸の隣に置かれている大きなタンクは、この濃縮された危険な水を貯めている「濃縮タンク」です。この濃縮物はトラックがやって来て、それらを運び去るまでタンクに貯蔵されます。


 こんな恐ろしい装置が自分の庭に設置されたら、とても住めたものではありません。皆さんどう思われますか。




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