米国シェールガス革命の裏側(その8)-ルイジアナ州での恐怖の水汚染

 今回はテキサス州の隣に位置するルイジアナ州の状況を見てみます。両者とも同じアメリカ南部の州です。ルイジアナ州と言うと、2005年に起こったハリケーン「カトリーナ」を思い浮かべます。ニューオリンズの町が完全に洪水でやられてしまいました。実は、ルイジアナ州の水汚染問題は、これらハリケーンとも大きく関与しているのです。どの様な形でルイジアナの水汚染に関与しているか、一緒にみて行きましょう。
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 作者ジョッシュは、ルイジアナ州では、化学者でマッカーサー財団の“天才賞”を受賞したウィルマ・サブラにインタビーできました。

 ウィルマは、「テキサス州の大気汚染の悪化と同様に、ここルイジアナ州では水汚染の悪化が深刻です。」と切り出しました。

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 「ルイジアナ州の海岸沿いや、ここから丁度南に当るメキシコ湾では、60年もの間石油や天然ガスを掘削してきました。そして、アメリカで生産する天然ガスの1/3がヘンリーハブガス会社を経由してアメリカ全土に送り出されています。

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 ところが、この60年という長期間、我々は石油やガスの掘削に伴って生み出される全ての副産物や排水を海へ投棄してきたのです。そして、これら投棄された物は水中に蓄積され、沈殿物として残っています。ハリケーン“リタ”や“カトリーナ”が襲来した際には、海に投棄してできた水中の沈殿物は陸へ戻って来るのです(右図参照)。陸へ戻って来た残渣はかき集められ、今度は陸の上で層状に積み重ねられます。ここら辺りに見られる汚泥は定着してしまっており、汚泥の土地と呼ばれています。

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 また、ここら辺りでは、ベンゼン、トルエン、キシレン、原子状ベンゼンといった有機物が検出されていますし、大量のホルムアルデヒドや半揮発性物質も長期間放置された状態です。更に掘削時に使用する液体には、ベリリウム、ヒ素、鉛、カリウム、クロム、水銀といった重金属も存在します。従って、水を飲んだ多くの人は、重金属によって汚染されています。

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 これらすべての化学物質は、各種タンク類の中に、防水提の中に、熱処理装置の中に、貯蔵タンクの中に存在しています。しかし、ハリケーンの大波からの防衛対策は何も施されていません。従って、ここでは有害な化学物質の多くを含んだ汚泥が、表層から2mの深さまで残っており、また住環境の中へ戻されてしまうのです。



 これらのことは、ハリケーンが頻繁に襲ってくるルイジアナ州、ミシシッピ州、アラバマ州、テキサス州の海岸線に沿って起こります。10万にのぼる地域で起こります。

 作者はウィルマが言っていることを整理してみました。石油と天然ガスの掘削が行われてきた南部ルイジアナ州の海岸線で60年に亘ってゆっくりと蓄積された汚染の状況は、決して浄化されることはないでしょう。そして同様なことが、シェールガス掘削が行われている内陸の河川の近傍でも起こっていることが十分に想像できます。

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 アメリカ全土には、血管のように張り巡らされた無数の細い河川があり、海岸線よりももっと汚染の状況を複雑にしています。34州に及ぶ主要河川において強行されている掘削がこれからも続けられるのであれば、環境にどんな大きなダメージがあるかが心配されます。皆さんどう思われますか。


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