新世界秩序への誘い(その4)-キリスト教に浸透するグノーシス主義

 「新世界秩序」発展の歴史変遷について、前回はスメリア、エジプト、バビロニアの古代神秘宗教との関わり、そしてユダヤ教の神秘思想「カバラ」との関わりまでを紹介しました。

 今回は、BCからADに切り替わったローマ帝国最盛期の時代に登場した超自然的知識で人々を救済する「グノーシス主義」との関わりについて眺めます(下図参照)。

イメージ
 古代ヨーロッパの歴史の中心ローマ帝国は、下図に示します様に古代ローマ(BC736~AD293)と中世以降の東ローマ帝国(AD395~AD1453)に分けられます。

イメージ

 古代ローマでは、自然界にある男の神々と女の神々たちの両方を崇めていました。いわゆる多神教です。しかし、イエス・キリストという若いユダヤ人が現れ、愛と「唯一の神」を説きました。イエス・キリストが現れた時期は、古代ローマ帝国の最盛期に相当し、キリスト教は人々の間にどんどん広がって行きました。これはローマ人にとって大問題となりました。しかし、ローマ政府は、キリスト教を排除できません。

 十戒の3番目にある「神の名を誤って使ってはいけない」という掟に背いて人々に説教したということで、イエス・キリストはユダヤ教徒達から弾劾され、磔になりました。

イメージ

 その1世紀後、キリスト教徒が急増し、宗教戦争にまで発展します。その対立でローマが二分されることを恐れたローマ皇帝コンスタンチィヌス1世(AD272~337)は、西暦325年キリスト教をローマの唯一の宗教と定めて国を統一しました。その際に、バビロニア、エジプト、ギリシャ、東洋文化やローマの信仰がキリスト教の中に浸透しました。その際の浸透の核心が「グノーシス主義」でした。

 「グノーシス主義」が、超自然的なもの、すなわち知識を通しての救済であるのに対し、キリスト教はイエス・キリストを通しての救済である点が両者の大きな差です。そして、このグノーシス主義がその後に現れる「新世界秩序」の主たる原動力となって行きます。

 歴史上では、キリスト教がローマ唯一の宗教と定められるまでは、イエス・キリストは偉大な予言者であり、あくまで「人間」であると、命に限りある人間だと考える人々が多くいました。これはグノーシス主義の一派における考え方です。

 イエス・キリストの言行録を記したものを福音書と言いますが、「グノーシス主義」の福音書には、マグダラのマリアについての記述があり、マグダラのマリアとイエス・キリストが恋愛関係にあったことを窺わせています。当時、グノーシス主義の一派はイエス・キリストは人間であり、末裔も存在するという立場に立っています。

 一方、カソリック教会側は、イエス・キリストを神の子と位置付け、人間だったイエス・キリストが神に昇格したという立場を取ります。イエス・キリストを唯一絶対の神に仕立て上げます。その後、キリスト教の教義を強化すべく、皇帝コンスタンチヌス1世は「ニケーア公会議」という有名な宗教会議を西暦325年に開催しました。そこではイエス・キリストが神の子か人間かが大いに議論されました。

イメージ

 ダン・ブラウンというアメリカの小説家が2003年に発表した「ダヴィンチ・コード」という小説があります。「聖杯伝説」を扱っている小説で、一躍世界のベストセラーとなりました。ブラウンは冒頭、「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、すべて事実に基づいている」と敢えて宣言していますので、この小説の事実に基づく部分の記述を参考にしたいと思います。

 この小説の中で、レオナルド・ダビンチの「最後の晩餐」の壁画のミステリーが登場します。キリストの右隣には女性らしき性別の人物が座っています。一般には、この人物は使徒ヨハネと解釈されており、髭のない青年を女性的に描いたものであると言われています。しかし、小説ではマグタラのマリアであるという説を紹介しています。

イメージ

 イエス・キリストはあくまで人間だと考えるグノーシス主義一派は、マグダラのマリアとイエス・キリストは結婚しており、子供を設け、その子の名前はサラであると主張します。イエス・キリストとマグダラのマリアの子どもサラは、その後グノーシス主義を重んじるシオン修道会によってカソリック教会派からの圧力から守られて行きます。そして、その後、シオン修道会のこの活動はテンプル騎士団、フリーメイスンと受け継がれて行くのです。

 今回紹介した「ダビンチ・コード」は2006年に映画化されています。なかなか面白い内容ですので、皆さんも一度見て下さい。




コーディネーター's BLOG 目次