新世界秩序への誘い(その5)-シオン修道会と「聖杯伝説」

 前回は「キリスト教」と新世界秩序の主たる原動力となった「グノーシス主義」の対立の構図を紹介しました。「グノーシス主義」一派は、イエス・キリストはあくまで人間であると考え、イエス・キリストとマグダラのマリアの子どもサラをキリスト教徒からの抹殺行為から守ります。このイエス・キリストの末裔を守るという思想は、中世ヨーロッパの時代になるとシオン修道会に受け継がれ、更にテンプル騎士団、フリーメイソンへと続いて行きます。今回はシオン修道会を追ってみました。

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 シオン修道会は1099年に設立されたヨーロッパの秘密結社であり、実在する組織です。1975年、パリの国立図書館が「秘密文書」として知られる資料を発見し、シオン修道会の会員多数の名前が明らかとなりました。そこには、サー・アイザック・ニュートン、ボッティチェルリ、ヴィクトル・ユゴー、そしてレオナルド・ダ・ビンチらのそうそうたる人物の名前が登録されていました。

 シオン修道会は3つの大きな義務を負っていると言われています。
         
1つ目はサングリアル文書、すなわち聖杯に関する文書を守ること、
2つ目はマグダラのマリアの墓を守ること、
3つ目はキリストの血脈、今も生き延びているメロヴィング王家の後裔を守ること、
です。


 このシオン修道会を調べて行くと必ず「聖杯伝説」にぶつかります。
「聖杯伝説」とは一体何なのでしょうか?

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 聖杯とは、イエス・キリストが最後の晩餐で使い、その後、アリアタヤのヨセフが十字架上のイエス・キリストの血を受けた杯と言われています。ところが、シオン修道会に言わせると、「聖杯伝説」は巧みに作られた寓話であって、実際には「聖杯」ははるかに重要な別のものの比喩として使われていると言います。

古代においては、杯はまさに女性らしさを表す記号でした。「聖杯」とは聖なる女性や女神の象徴でした。ところが、この様な考えは、キリスト教会によってほぼ完全に抹殺されてしまいました。男性の支配するカソリック教会が勢力を伸ばすにあたっては、女性の力と、命を生み出すその能力は脅威だったから、遂に聖なる女性は邪悪で不浄なものと見做されるようになりました。

 「聖杯」とは、忘れ去られた女神の象徴なのです。キリスト教が栄え続けたと言っても、古代の異教がやすやすと滅びた訳ではないのです。失われた「聖杯」を探す騎士たちの伝説は、実のところ、失われた聖なる女性を追い求める、禁じられた探索の物語であるという訳です。

 一方、マタイによる福音書は、イエス・キリストが王家であるダビィデ家の出であると述べています。つまり、ユダヤのソロモン王の末裔であるとしています。一方、マグダラのマリアも、ベニヤミン族の王族の血を引いています。

 従って、「聖杯伝説」とは、王家の血の伝説となるわけです。「聖杯伝説」がイエス・キリストの血を受けた杯について語る時、それが指しているのは、マグダラのマリア、すなわちイエス・キリストの聖なる血脈を宿した子宮となるのです。シオン修道会はいまでもマグダラのマリアを女神、聖杯、薔薇、聖なる母として崇拝しています。


 キリスト教会は女性を隷属させ、女性を追放し、屈しない者を火炙りの刑に処し、聖なる女性を崇める異教を弾圧してきました。「魔女狩り」が行われたのもこの頃です。

 この「魔女狩り」とは一体何で、どうして行われたのでしょうか。

 シオン修道会は、コンスタンチヌス帝とその後継者である男性の皇帝たちは、聖なる女性を公然とこきおろし、女神を永久に消し去ることで、母権的な異教社会から父権的なキリスト教社会への転換を成し遂げたと言います。

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 カトリック教会の異端審問官が著した「魔女の鉄槌」は、人類史上最も血塗られた出版物と呼ぶべきものです。この書物は「自由な思想を持つ女の脅威」を世に知らしめることや、そういう女たちを見付け出し、拷問し、抹殺する方法を聖職者に解き明かすことを目的としています。

 教会によって「魔女」と見做された中には、女性の学者、祭司、ジプシー、神秘主義者、自然崇拝者、薬草収集家、さらには「自然界と一体化した疑いのある」あらゆる女性が含まれた。助産婦も殺されましたが、それは出産の苦しみを-----教会の主張によれば、イブが知恵の実を食べておのれに原罪をもたらした後、神が罰として与えた受難を-----医療の知識によって和らげることが邪悪とされたからです。

 魔女狩りが行われた300年の間に、教会が焚刑に処した女性の数は、実に500万人に達するそうです。


 ところで、シオン修道会は良く悪魔崇拝の一派と言われます。これはシオン修道会が行う秘密の儀式「聖婚」によるところが大きいようです。「聖婚」については次の様に説明されています。

 古代には、男性は精神的に未完成であり、聖なる女性との交接によって完全な存在になると信じられていました。女性との肉体的結合は、男性が精神的に成熟し、ついには霊知-神の知恵-を得るための唯一の手段でした。エジプトの女神イシスの時代から、性の儀式は男性を地上から天国へ導くただ1つの架け橋と考えられてきました。
 
 「女性と通じることで、男性は絶頂の瞬間を迎え、頭が空白になったその刹那に神を見ることができる」というものです。

 そして、シオン修道会が行う秘密の儀式「聖婚」は次の様に行われます。

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 女性はみな薄い生地の白いローブを着て、金色の靴を履きます。手には金色の球を持ちます。一方、男性は黒の長衣に黒の靴を身に付けています。また、全員が同じ形の中性的な仮面を付けています。女性は白の、男性は黒の仮面といういでたちです。なかなか神秘的な儀式です。

 この様に「新世界秩序」の源流である超自然的知識による人々の救済は、ローマ時代においてグノーシス主義とそれを自らの中に実現したシオン修道会へと引き継がれて行きました。「聖杯伝説」「魔女狩り」「悪魔崇拝」といった言葉が前面に出て来るのもこの時代ですが興味深いものがあります。皆様はどう思われますか。



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