新世界秩序への誘い（その11）－迫害に苦しんできたユダヤ人
新世界秩序を語る上で、ユダヤ人マイアー・アムシェル・ロスチャイルドと彼の5人の息子は紛れもなく主人公です。そして、イギリスおける銀行経営に象徴される宮廷ユダヤ人の生活が、政治・経済をグローバルに左右してきました。
新世界秩序の現代に至る展開においても、ユダヤ人社会を抜きにして語ることはできませんので、今回はユダヤ人の歴史について少し追いかけます。
まず、ユダヤ人は、ユダヤ教の信者（宗教集団）あいはユダヤ人を親に持つ者（血統）によって構成される民族集団で、人種ではありません。ユダヤ人の歴史を見ますと、BC1021年にユダヤ人の国家である古代イスラエル王国が形成され435年続きます。しかし、その後約2,500年近くは、ハスモン王朝に486年間、ローマ帝国に736年間、イスラム帝国に463年間、東ローマ帝国に192年間、マムルーク朝に226年間、オスマン帝国401年間というように、他王国に支配され、自分の国家を持つことが出来ませんでした。第二次世界大戦後の1948年にようやくイスラエルの独立宣言が行われ、ユダヤ人の国家が成立します。
2010年現在の調査では、ユダヤ人は全世界に1,340万人超が存在しています。民族独自の国家としてのイスラエルがある他、各国に住民が生活しています。
ユダヤ人が長い間迫害を受けてきたことは、よく知られる事実です。このあたりの事情は、ユダヤ人が信ずる宗教ユダヤ教と大きく関係があるようです。
世界の三大宗教と言えば、キリスト教、イスラム教、仏教のことを指します。信者数では、キリスト教が20億人、イスラム教が13億人、仏教が3億6千万人とされています。
一方、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教はアブラハムの宗教と呼ばれています。いわゆる旧約聖書という同一の経典を信仰する宗教です。
そして、ユダヤ教はそれらの中で最も古くから続くグループです。ユダヤ教の誕生から1,500年遅れてキリストの誕生、さらに500年経ってイスラム教が誕生します。
旧約聖書によると、紀元前17世紀前にユダヤ民族の始祖アブラハムが、メソポタミヤのウル（現在のイラク南部）から部族を引き連れて「カナンの地」（現在のイスラエル、パレスチナ付近）に移住したとされています。
その後、紀元前17世紀頃にヘブライ人の子孫たちは、古代エジプトに集団移住しますが、古代エジプトの地で彼らはエジプト人の奴隷となって行きました。
旧約聖書の1番目の書である「創世記」では、人類や生命の説明をしています。有名なノアの方舟はここで登場します（下図－左）。二番目の書である「出エジプト記」では、紀元前1300年頃モーゼが虐げられていたユダヤ人を率いてエジプトからシナイ半島に脱出を果たすと記されています（下図－右）。
「創世記」ノアの方舟 「出エジプト記」モ－ゼ
多くの国際宗教は、時の権力者や、文化、歴史的経緯、人々の都合によってそれぞれ改変されながら変化していった歴史を持ちます。時代に適応できなかった宗教は絶滅し、適応した宗教は長期間存続しました。
しかし、ユダヤ教は通常の適応進化とは全く異なる宗教の歴史を持っているのが特徴で、権力への適応ではなく、迫害・離散への適応という形で発展して行くのです。
ユダヤ教徒は教義上イエス・キリストをメシア（救世主）と認めません。また、イエスはユダヤ人によって十字架にかけれたという俗説が古代から中世にかけて流布し、ユダヤ人は「神殺し」（イエス殺し）の汚名を着せられました。これが原因で、ユダヤ人はヨーロッパ社会で長い間迫害を受けて来たものと考えられます。
初期近代に当る1600年にイギリスの作家ウィリアム・シェイクスピアが発表した戯曲「ヴェニスの商人」では、主人公の友人を借金の形としたユダヤ人高利貸しという設定のシャイロックという人物が登場しました。
喜劇「ヴェニスの商人」の中心的な位置を占めているのは、もちろん「人肉裁判」です。少し紹介します。
法廷の場面で、裁判官に扮したポーシャは、ヴェニスの商人アントーニオーに死の覚悟を固めさせておいてから、最後に、皮肉にも、ユダヤ人で高利貸しのシャイロックに、「そんなに証文の条文に固執するのなら、証文どおりきっかり1ポンドの肉しか切り取ってはならぬ」ときつく言い渡します。これはかなわぬとシャイロックが譲歩して、証文の3倍を受け取って示談にしましょうと言っても、今度はポーシャが許さない。それどころか、血を流させたり、肉を余分か少な目に切り取ったら死刑に処し、財産を没収すると迫ります。
この芝居が書かれた当時の英国では、ユダヤ人は入国を禁止されており、悪どい高利貸しも道徳的に忌避されていました。その風潮をシェイクスピアは利用したまでなのです。ユダヤ人がこの時期迫害されていた１例です。
ユダヤ人が長い間迫害されてきた理由を少しは垣間見た気がしますが、皆さんはどう思われますか。