新世界秩序への誘い(その26)…ギリシャ神話と宇宙のつながり

 古代宇宙論では、アリストテレス(BC384~BC322)によって唱えられた天動説が、アリスタルコス(BC310~BC230)の地動説を押し退けて2,000年以上も正しい説として語られてきました。そして、15世紀に入ってようやくコペルニクスによって地動説が再び日の目を見たのです。

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 この様に、なぜ2,000年以上の長期に亘って天動説が信じられて来たのでしょうか?

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 これは古代ギリシャ人(BC800中頃からAC700中頃)によって創作されたギリシャ神話と強く関係付けられていると見做せます。ユダヤ教やキリスト教も、ギリシャ神話を後押ししていたと考えられ、天動説は一種の宗教の様なものではあったと思われます。宗教であったからこそ、2,000年の長きに亘って信じられて来たのではないかと思います。

 神を中心とする神話と、英雄が主人公の伝説からなるギリシャ神話が語られたのは、今から2,500年以上も前(BC800中頃からAC700中頃)のことと言われています。その後BC300頃に、天動説、地動説が語られたわけです。近代になって、科学や学問が発達したお蔭で、多くの疑問が解明されてきました。しかし、それでもやはり解らないことはまだ多いと言えます。

 そもそも宇宙や地球はどの様にしてできたのか。この謎にギリシャ神話はどう答えたのでしょうか?

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 世界の始まりの神話としては、旧約聖書の「創世記」が名高いと言えます。キリスト教とユダヤ教の聖典である旧約聖書によれば、超越的な神ヤハウェの「光あれ」という言葉と共にこの世界が創造されたと記されています。

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 ギリシャでは、世界は唯一絶対の神によって創造されたのではありません。ギリシャには、宇宙や世界の始まりに関する神話他にも幾つもあります。ここでは最も良く知られているヘシオドスの「神統記」の系譜的な神話を引用します。


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 それによりますと、最初に「カオス」が生じ、次に「ガイア」と「タルタロス」と「エロス」が生じました。この世界は神によって創造されたのではなく、何時のことかは解りませんが、ある時突然生じたというのです。ここで「カオス」という言葉が登場します。しばしば「混沌」と解されるので無秩序な混乱というイメージを与えます。しかし、ヘシオドスの言うカオスとは、ちょっと欠伸をして大きく口を開けたときの様な「巨大な裂け目」を意味します。何の前触れもなく、いきなり出現した大きな割れ目、世界はそこから始まりました。

 カオスに続いて、三つのものが生じます。ガイアと呼ばれる大地と、大地の深奥にある奈落の底というべきタルタロス、そして不死なる神となかでも最も美しいエロスです。これら3つのものは超越的な神の創造物ではなく、全て自然発生しました。この点にこそ、ギリシャ神話の特性があります。

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 また、ギリシャ神話には、しばしばオリンポス12神が登場します。ギリシャ最北のテッサリア地方とマケドニアとの国境には、標高2,917mのギリシャ最高峰のオリュンポスが実際にそびえています。


 その山頂もしくは天上に12神を中心に他の多くの神々も住んでいると考えられます。ギリシャの神界は、ヒエラルキー構造をなす多神教世界であり、その頂点に立つのがオリュンポスの神々です。オリュンポスの世界は、疑似的な家父長制社会で、家長ゼウスとその兄ポセイドンと姉ヘラとデメテル、そしてゼウスの子供達、アレス、ヘパイトス、アプロディテ、アテナ、アポロ、アルテミス、ヘルメスによって構成されています。

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 私事ですが、2007年6月に米国ハワイ島にある標高4,205mのマウナケアに行きました。山頂付近は、通常発生する雲の上に位置するため、年間300日を越える日が晴天で、高地のため大気の空気が澄んでおり、また、赤道に近い北緯20度にあるため、北半球・南半球の天体を同時に観測できる世界有数の天体観測地点です。日本が誇る「すばる展望台」もあり、世界の多くの展望台がここに設置されています。その際に、ガイドさんがレーザー光を用いて「さそり座」を示してくれたのが、非常に印象的でした。 

 ギリシャ神話でも、この「さそり座」と「オリオン座」に関する有名な神話がありますので、紹介します(西村賀子著:ギリシャ神話)。

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 狩人のオリオンが猛烈な勢いで狩りをして、世界中の獣を狩り尽してしまう恐れがあったため、ガイアが凶暴なサソリを放ってこの狩人を殺しました。獣の敵である猟師オリオンを倒した功績により、そのサソリは天上に引き上げられて星座になりました。一方、オリオンを慕っていた狩猟の女神アルテミスは、彼の死を悼み、ゼウスに願い出てオリオンを夜空に置いてもらいました。オリオン座とさそり座は、丁度180度隔てた正反対の位置にあるため、さそり座が沈まないとオリオン座は現れません。神話はこの現象を、オリオンがさそりを恐れて逃げ回っていると説明します。日本では夏の空にさそり座が現れ、冬の空にオリオン座が現れます。

 ギリシャ神話は、宇宙や自然、神々、人間、動植物など、この世界を構成する全ての事物や現象を、物語形式によって説明しようとした古代ギリシャ人の思惟の結晶の1つであると思われますが、皆さんどう思われますか。



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