新世界秩序への誘い(その28)…時間の伸縮と空間のゆがみを理解する

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 私たちは、ニュートン力学の下で、時間というものは絶対的なもので、時間を伸ばしたり縮めたりすることはできないと考えていました。ところが、アインシュタイン(1879~1955)は、相対性理論なるものを提唱して時間は伸び縮みすると主張し、これが正しいことを示しました。

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 今回は、非常に分かりやすい科学的説明を見つけたので紹介します。参考文献は、宇宙開発事業団の菊山紀彦氏と本田成親氏が書いた「宇宙の不思議がわかる本」三笠書房です。


 光速に近い速度で飛行する宇宙船の真ん中にレーザー発光器があって、レーザー光線が発せられたとします。宇宙船の中で見た場合、発光器を出たレーザー光は、前後に同じ距離を同じ速度で進み、同時に宇宙船の前後の壁に到達します。ところが、宇宙船の外からこの様子を観察できたとすると、予想外のことが起こります。発光器から出た光が、宇宙船の中を進むわずかな時間の間にも、宇宙船は前進し続けます。

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 光速度不変の原理により、光の速度は光源の運動に関わりなく空間に対して一定ですから、宇宙船の後部の壁は進んで来るレーザー光線の方に向かって移動し、宇宙船の前の壁は、進んで来る光と同じ方向に逃げる形で移動します。すると、宇宙船の後部の壁にレーザー光線が到達した時刻に、前部の壁にはまだ光線が到達していないことになるのです。

 宇宙船の中では同時に起こった様に見える事象が、宇宙船の外から見ると、異なる時刻に起こった様に見えるのです。この事実は、宇宙には絶対的に共通な流れの時間など存在せず、観測者の立場によって異なるそれぞれの時間が流れていることを示します。すなわち、相対的時間しか存在しないことを物語っているのです。

 光速度不変の原理に立てば、時間も空間も絶対的なものではなく、宇宙のそれぞれの場所にそれぞれの時間と空間が存在していることを認めなければならなくなるのです。「宇宙空間内においては、誰もが同じ時間と空間を共有しているのではない」とするこの考えは、アインシュタインの特殊相対性理論と言われています。特殊という言葉は、等速直線運動という特殊な条件の下で、初めて成り立つ理論ということです。

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 この時間の伸縮を題材にしたアメリカ映画があります。クリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」(2014年作)という題名の映画です。

 この映画では、探索機が銀河系外のミラー星に着陸する場面がありますが、ミラー星の上では、地球の1時間が7年間に相当します。従って、ミラー星の上に着陸して、試料採取後に宇宙ステーションに戻って来るのに、地球上の感覚で1時間掛かれば、戻って来た瞬間に、すでに7年経っている訳です。

 映画では、ミラー星上で大津波が発生し、探索機のエンジンが濡れ、脱出に3時間以上かかりました。すると、宇宙ステーションに戻った時には、宇宙ステーションに残っていた乗組員は23年間待っていたので、白髪の年寄りになっていました。

 この映画では、至るところに、この時間の伸縮に関わる場面が出て来ます。本当にこの様なことが起こるかどうかは判りませんが、アインシュタインの特殊相対性理論に従うと、否定できないことになります。

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 さて我々は、地球が太陽の周りを永遠に回転し続けている様に思っています。しかし、どうしてこの様な事が起こっているのかを上手く説明したものがあります。ここでも、アインシュタインの相対性理論が登場します。

 今回は、一般相対性理論と呼ばれるもので、ポイントは重力によって空間が曲がるという考え方です。これによって、地球の公転は説明が付きますので、それを紹介します。

 アインシュタインは、空間に歪みを生み出すのは、質量を有する大小の物体の持つ重力だと考えました。太陽を初めとする恒星の様な質量の大きな天体は、大きな重力によって周辺の空間を曲げてしまいます。銀河や銀河団の様な巨大な質量の集合体などは、その周辺の空間をより大きく歪めます。

 大質量の天体の周辺に、小質量の天体が転がり近づいた場合、小天体は大きな天体の重力空間の窪みの周りの傾斜面を、窪みの中央にある大きな天体の方に向かって転がり始めます。転がり方は色々で、重力場、傾斜面の傾きの大きさや、小さな天体のもともとの運動方向、運動速度などに影響されます。小天体の初めの運動速度が小さく、重力場の曲面の傾斜が大きければ、小天体は大きな天体の方に向かって一気に傾斜面を転がり落ちます。

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 また、小天体の初めの運動速度が速すぎたり、運動の方向が重力場の中心方向とかなりずれていたり、重力場の傾斜が比較的緩やかだったりすると、小天体は重力場の傾斜面の影響で進路を曲げられながらも、その重力場の一端を横切る様にして通過して行きます。

 大天体の作り出す重力場内にたまたま近づいた小天体が、程よい運動方向と運動速度を持っていた場合、丁度ルーレット盤を回る小球の様に、小天体は大きな天体の周りを重力場に沿って回り始めます。厳密には、円に近い螺旋を描きながら、重力場の中心方向に少しずつ近づいているか、逆には永遠に回転し続けている様に見えるのです。惑星が太陽を回る原理も、月が地球を回る原理も、この考え方で説明がつきます。

 アインシュタインが相対性理論を引っ提げて登場した時、ニュートン力学を信奉していた科学者達にとって、文字通り悪夢の様な出来事だったと思いますが、皆さんどう思われますか。



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