新世界秩序への誘い(その30)…宇宙における奈落の底ブラックホール

 ブラックホールは、強大な重力を持つ謎めいた天体です。中に入ると、光すら外に逃げ出すことはできません。下図の様に、太陽よりもかなり重い恒星が燃え尽きて大爆発する際、星の中心部が強い力で押し潰されてブラックホールが生じると考えられています。星と星は互いの重力でバランスを保たれているわけで、その一方が爆発で消えれば、自らの重力で押し潰されることは十分理解できます。

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 一方、天の川銀河は、直径が約10万光年もある円盤状の星の集まりです。これまでに膨大な数の星の大爆発が起き、1億個以上のブラックホールが形成されたとみられています。

 ブラックホールは、光を全く出さないので、望遠鏡で直接観測できません。しかし、最近ようやく、からめ手からその所在を炙り出せることが分ってきました。これまでに3つの手法で間接的に存在が確認されています。

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 1つはエックス線とガンマ線による方法で、ブラックホールが連星の相手の星から吸い込むガスの輝きを捉える方法です。

 これまでに、この方法で発見されたブラックホールは約60個に達します。ブラックホールの中には、普通の星と結びついて連星となっているケースがあります。このタイプは相手の星からガスを吸い寄せています。吸い寄せられたガスからは、エックス線やガンマ線が放射されるので、それらをエックス線宇宙望遠鏡やガンマ線宇宙望遠鏡などを使い観測するのです。

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 1つは重力波の観測による方法です。10憶光年以上先の銀河で起きた事例が観測されているものの、天の川銀河内のものはまだ見つかっていません。重力波は非常に重い物体が激しく動いた時に、周囲の時間や空間が伸び縮みし、波の様に宇宙に伝わる現象です。






 1つは宇宙から飛来する電波を測定する方法です。観測対象は、ガスやチリの集まりで、宇宙を雲の様に漂っている星間分子雲です。この星間分子雲は電波を出しており、動きを詳しく観測すれば、規模や組成はもちろん、各部の動きも分ります。それが「ブラックホールの炙り出し」に繋がります。ブラックホールの近くを他の星の大爆発による衝撃波が通ったことで、周辺の星間分子雲に大きな乱れが生じ、ブラックホールに向かうガスの流れが引き起こされると見なせます。それを電波観測で捉えるわけです。星の大爆発で生じるブラックホールは重いものでも太陽の数十倍と考えられていますが、炙り出されたブラックホールは太陽の約10万倍もあるそうです。(慶應義塾大学 岡教授)

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 ブラックホールの発見にまつわる話は下記の様なものです。

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 1916年、一般相対性理論の重力場の方程式を解いていたドイツの天文学者カール・シュバルツシルトは、驚くべき解を発見し、アインシュタインに報告しました。宇宙のある部分には、異常に重い(密度の高い)物質からなる特異点が存在し、その周辺では四次元時空の曲率が無限大になって空間が瞬時に収縮し、強力このうえない重力場が形成されるというのです。

 この異常重力の世界では、30万km/秒の高速度で空間を走る光の量子さえも、その中心に引き込まれてしまうほどです。暗黒の無限地獄を思わせるこの特異点は、イメージそのままに「ブラックホール」と命名されました。ブラックホールとは、四次元時空のゆがみの中に現れる「四次元空間から見たときの三次元の深い穴」と説明されて来ました。

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 宇宙のある部分に特異点が存在する理由について、ホーキングは次の様に説明しています。「局所的なインフレーションを起こす寸前で留まった古い真空部分やワームホール、ワームホールの名残などは、ブラックホールとなった可能性が高いと言える。」


 最近では2017年3月27日の日経新聞に「ブラックホール解明に世界連携」の記事が、また、2017年6月18日の日経新聞に「ブラックホールあぶり出せ」の記事が続いて掲載されました。

 2017年3月27日の記事によれば、太陽系が属する天の川銀河(銀河系)の中心にあるブラックホールを観測する国際プロジェクトが始まるというものです。チリやハワイやメキシコ、南極など世界7ケ所にある電波望遠鏡を連携させ、ブラックホールの正確な大きさや形の観測を目指すというものです。成功すればノーベル賞級と言われています。いまだ謎が多いブラックホールの実像に迫るだけでなく、現代の物理学理論の見直しにつながる可能性があるとのことです。

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 宇宙に存在する奈落の底ブラックホールも、少しずつその神秘性がなくなりつつある様ですが、皆さんどう思われますか。



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