新世界秩序への誘い(その31)…神のみぞ知る宇宙の起源

 我々が住むこの地球上においては、「科学で解明できないものなど無い」とよく言われます。ただ、科学的思考と云うのは、すべてが証明され明白になっていない限り、結論を出してはなりません。いずれすべてが解明できると、希望的観測を述べるならいいのですが、照明できない部分まで含めて解ったような顔をするのはおごりに過ぎません。科学的思考によって理解しようとするなら、現状判らないままで棚に上げておくしかないのだ、という腹の括り方をしなければ嘘となります。

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 この科学的思考という観点に立つ時、宇宙の誕生はどう記述されるのでしょうか。宇宙については、下図に示します様に、まず宇宙の萌芽すなわち原初宇宙ができ、これが急激に膨張し始め、ある瞬間にビッグバンが発生して現在の宇宙となります。その宇宙はどんどん膨張して、いずれは収縮に転じて消滅すると言われています。

 ここで、ビッグバンとそれに続く宇宙の膨張があったことについては、
(1) 星や銀河スペクトルの赤方偏移
(2) 3°Kの宇宙背景放射の発見
(3) 星の活動による生成量をはるかに超える大量のヘリウムの存在
という3つの証拠が揃ったので、動かし難い事実となりました。しかし、ビッグバン理論が正しいとすると、原初宇宙は体積が無限にゼロに近かったにも関わらず、そのエネルギー密度と温度は無限大でなければなりません。その様な状態がどの様にして生まれたかについてはまだ説明がついていません。

 現在、宇宙の誕生については2つの仮説があります。ピレンキンの「トンネル効果」説と、ホーキングの「無境界化説」の2つです。

 いずれの説も、プロセスは違うものの、真空エネルギーのゼロ点振動によって生じた宇宙の卵が、突然に原初宇宙となって姿を現したと考えています。ゼロ点振動とは、真空エネルギーの揺らぎ、すなわち、正負の真空エネルギーの綱引きでちょっとだけ正の真空エネルギーの力が勝った時に、一瞬生じる、泡粒みたいな正の真空エネルギーのかたまりこそが宇宙の卵だと言う訳です。

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 まず、ピレンキン説ですが、「トンネル効果」によって、負の真空エネルギーの障壁を突き抜けた宇宙の卵の1つが、現在の宇宙に成長したのだと考えました。シュレディンガーの方程式が示す様に、トンネルを抜ける列車の様に宇宙の卵が瞬時に負の真空エネルギーの山脈を突き抜けてしまうことが起こっても、量子論的には不思議ではないと言うわけです。

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 球が坂道を上って行きます。しかし、ミクロ的に見ると、球は一直線上を動いているのではなく、球の中心での球のエネルギーは、ゼロ点振動を行ない、ある確率でかなり大きなエネルギーを示すこともある訳です。坂の頂上のエネルギーを越えることは十分に考えられる訳です。

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 次にホーキング説です。ホーキングは通常の三次元空間と実数の時間軸と虚数の時間軸とによって構成される時間の平面とか組み合わせられてできる空間を考えます。いわゆる四次元時空宇宙です。

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 ホーキングは、虚数時間と実数時間とはもともと連続していて、一方の時間から他方の時間への自然な移行が可能だと考えました。この理論に従うと、四次元時空宇宙の誕生や消滅は、本来は五次元空間である虚数時間の世界の一部が、実数時間のみが軸に沿って出現していた空間が虚数時間の世界へと自然に吸収されたりすることに他ならないということになります。従って、原初宇宙の誕生を特異点と関係付けて説明する必要はないとホーキングは解きます。

 虚数というのは、もともと2次方程式や3次方程式を解くために、16世紀頃の数学者によって使われ出した便法です。そして、虚数とは、それ自体では実数ではないが、2乗すると負の実数になるような数です。i=√-1と表わされます。

 要は、実在しない世界を表現するために使われる道具で、ホーキングもこの虚数を用いて宇宙の誕生を説明している訳です。これは数学で使用する空想の虚数空間を宇宙の誕生に利用したもので、理解しやすいものです。

 この説明に従いますと、ホーキングの宇宙像は、緯度線と経度線を持つ地球の表面に似た球面モデルを用いて説明されます。この球面モデルにおいては、地球の緯度線に相当する線は宇宙空間の膨張と収縮の推移を、一方、経度線に相当する線は、宇宙誕生から消滅までの時間の流れを表しています。すなわち、北極、南極点で実数時間から虚数時間への移り変わりがある訳です。

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 藤子F不二雄のドラえもんが「どこでもドア」を開くと、簡単に別の世界に入ることができます。正にこの様なことが宇宙の誕生の領域では、科学的に議論されていますが、皆さんどう思われますか。





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