中小企業経営と向き合う(その9)…自分の会社を持つ夢の実現

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 サラリーマンが、副業として給与収入とは別に事業収入を得てより豊かな生活をしたい、あるいは、妻に事業をさせて、夫の給与収入と妻の給与収入を合わせることによってより豊かな生活をしたいと考えるのは当然のことです。かくいう私も、平成元年(1989)に妻が社長で私が取締役を務める有限会社Cを発足させました。私はサラリーマンの給与収入と不動産収入、妻は塾運営による事業収入を得ていますが、すでに30年間継続しています。今回から少し、どの様な事業をやっているのか、なぜ会社組織でやっているのか、今後どうしていくのか、等について色々と述べてみたいと思います。

 今回は、有限会社Cを設立するに至った経緯を紹介し、自分の会社を持つことの意義は何なのかをまず考えてみます。

 サラリーマンである個人が、会社からの給与所得の他に株式売買や不動産運用で所得を得ている場合には、年度末に確定申告をして納める税金額を確定する必要があります。個人で行う事業が、それなりの収益をもたらす場合には、確定申告時に青色申告をして節税対策を取ることも普通に行われます。ただ、青色申告を選択しますと、お金の流れをきっちりと示せる家計簿の様な記帳が必要となります。

 確定申告書を見ると、最初のページの左上に所得の種類が明示されています。それによれば、事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、給与所得、年金を含む雑所得、総合譲渡および一時所得の8種類があります。サラリーマンの給与には給与所得税がかかりますが、副業を行なって得た所得には事業所得税が、親からの遺産として譲り受けた不動産で収入を得ておれば不動産所得税を支払わなければなりません。私の場合は、年金による雑所得、部屋の賃貸しによる不動産所得、コーディネーターの給与所得が主な収入源で、これらが1/3ずつとなっています。これには若い時代にポートフォリオ理論による分散戦略の名残りですが、これはまた別の機会に紹介します。

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 青色申告とは白色申告の対になる用語ですが、事業所得や不動産所得、山林所得を生じる様な個人事業を営んでいる人は、税務署長の承認を受けて青色の申告書で申告することができます。青色申告者は、原則として複式簿記により必要な帳簿に記帳しなければならない等、事務処理面でやっかいな義務があります。しかし、その反面、所得計算上あるいは申告や納税の手続きの上で、様々な特典もあります。例えば事業専従者給与の必要経費算入とか、青色申告(特別)控除(35万または10万)などは、白色申告者にはない有利な点です。青色申告するかどうかの目安は、配偶者がいて86万円以上の給与を支払っているかどうかです。86万円までは白色申告でも必要経費に算入できるからです。

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 事業の規模が大きくなって1人でやっていくのが大変になってきた場合は、会社組織にして、複数人での運営を考える方が、資金面でも運営面でも楽になります。図は典型的な会社組織です。ライン部門とスタッフ部門を設け、ライン部門には製造部、営業部、購買部を、スタッフ部門には総務部、経理部、情報システム部を置き、事業を組織的に動かす訳です。会社組織でやる場合には、個人事業の場合の所得税の代わりに法人税が課せられます。

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 平成元年(1988)の時点で、私自身は企業に勤める40歳のサラリーマンでした。当時、妻が学習塾を始めていましたが、パートとして私の扶養家族の立場でやっていくのか、あるいは、パートの枠を外して思い切り手を広げるのかということで、色々と検討しました。当時、良く行われていた市の無料税務相談会に参加し、その時に相談に乗って頂いたK税理士さんの意見を取り入れて、最終的に有限会社Cを設立することにしました。

 妻が事業を始める場合には、片手間のパートでやるのか本格的にやるのかで考えが変わり、その判断は配偶者控除制度との見合いとなります。2018年1月の税制改正により、配偶者控除に関するルールが図の様に変わりましたので、注意が必要です。配偶者控除を受けられるパートの上限年収がこれまでの103万円から150万円に拡大されました。所得控除額は38万円です。また、配偶者特別控除は、従来の103万円~140万円であったものが、150万円~201万円のパート収入に対し適用されます。但し、納税者本人の給与収入は1,120万円という上限が設けられ、これ以上であれば、配偶者のパート収入に関わりなく扶養控除は適用されません。

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 また、パート収入に関して言われる「扶養」には2つの種類があります。1つは「税法上の扶養」、そしてもう1つは「社会保険上の扶養」です。今回改正された配偶者扶養控除は税法上の扶養です。税法上の扶養とは、扶養者(配偶者、子供)の給与年収が150万円以下である場合に申請することができます。税法上の扶養に入っていると、被扶養者(妻)は、本来払わなければならない所得税や住民税の一部が免除されます。社会保険上の扶養とは、健康保険の扶養となる人は、自分で保険料を支払うことなく、健康保険に加入することができます。こちらのパート収入の上限は130万円です。

 さて、平成元年(1989)当時に戻りますが、妻が有限会社Cの社長、夫の私が取締役となりました。その後2000年の商法一部改正で、有限会社は全て株式会社に統一されました。その時点で、有限会社を名乗っていて、かつ、そのまま継続したい場合には、有限の名称を使えるということで、有限会社Cで続いています。

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 有限会社と株式会社の違いを示します。有限会社にしても、株式会社にしても、会社が倒産に至った時の責任は、役員個人には降りかかりません。倒産はあくまで法人としての責任問題です。但し、資本金出資額に相当するお金は捨てることになります。有限会社は設立時に取締役が1人以上、また、監査役については、取締役会設置会社または資本金5億以上の大会社では監査役1名以上が必要となりますが、有限会社では監査役は必要ではありません。

 ここで、会社組織にした時のメリットは何かを少し自分自身の経験を交えて紹介したいと思います。夫と妻の事業内容が全く別物であり、各々が青色申告するという状況ならば、会社組織にして運営した方が、各種手続きが重複しないので有利です。また、青色申告で払う個人の所得税よりも、会社組織で法人税として払う方が安く節税のメリットがあります。


 会社決算書作成を自分自身で手掛けることにより、お金の動きが自分で掴め、何に力を入れるべきか。どうすれば効率良く収益につなげることができるのか、などの事柄が良く見えてきます。1990年代前半、日次決算という言葉が流行りました。会社の社長たるもの、会社の日々のお金の動きを知って即決断するために、日次決算書を眺めて判断を下しなさいというものでした。

 現在、私も決算書の作成には関与していますが、決算書作成の流れは次の様になります。仕訳帳 ⇒ 総勘定元帳 ⇒ 試算表 ⇒ 決算書の一連の会計処理の流れからなりますが、決算書の一つ手前の試算表作成までを自分自身で行い、最後の決算書作成を税理士にお願いする形を取れば、会社の中のお金の動きが良く見えると同時に、税理士にお支払するコストを削減することができます。全てを税理士に任せるのは良くないと思います。

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 決算書を自分自身で作成すると、色々なメリットが出て来ます。例えば、
(1) 会社が赤字になり掛かった場合には、減価償却を止めて赤字決算を食い止めることも可能です。赤字になると、色々な面で不利です。まず大きいのが、銀行からの融資です。赤字企業に銀行は融資してくれません。
(2) 会社に個人的に出資をした形にし、これで会社として自動車を購入したり、マンションを購入して会社の事業として運用して行くことも可能です。出資金は会社が十分に利益を上げた時に、一括して返却してもらっても良いし、定期的にある割合で返済してもらうという形でも良いと思います。
(3) 特に自動車については、経理上は、会社の自動車を個人的に借用した形にすると、ガソリン代や修理代、車検費用等は全て会社の費用で落とすことができます。特にこの形は、身内だけで会社経営をしている場合に有効であると思います。

 今回紹介したものは、会社を起こして大きく発展させるという内容ではなく、飽くまでも節税をしつつ、生活を豊かに送るための、小規模事業的な会社運営の話ですが、皆さんどう思われますか。



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