金融工学への誘い(その3)…オプション取引の醍醐味を味わう

 2003年(平成15年:55歳)当時、不動産を生業にしているKという友人から、ブラックショールズの紹介を受けました。K氏は滋賀大学経済学部を卒業後、現在のパナソニックに勤務し、その後父親の死去にともない不動産業を継ぐために名古屋に戻りました。その後、愛知学院大学の博士課程に学び、経済学博士号を取得しています。そもそも知り合ったのは、1989年(平成3年)頃に、共に中日カントリークラブのメンバーでゴルフ仲間となったのがきっかけでした。彼は不動産投資戦略関連の本を2000年、2002年、2004年と3冊出版しています。そこには金融工学が登場し、リターンとリスクと不確実性の投資概念が展開されていました。私も、ゴルフ仲間が金融における理論武装しているということもあり、負けじと少し勉強しました。

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 今回は、オプション取引について、オプション取引とはどの様なものなのか、どの様に活用されているのか、などについて少し紹介してみたいと思います。なお参考書は吉本佳生著の「金融工学の悪魔」(2002年版)です。

オプション取引

 オプション取引は、デリバティブ取引の一種です。デリバティブ取引とは、株式、債券、金利、為替など原資産となる金融商品から派生した金融派生商品(デリバティブ)を対象とした取引のことを言います。主なものに、

・先物取引…将来売買する商品の売買条件をあらかじめ決めておく取引
・オプション取引…将来商品を売買する権利をあらかじめ購入する取引
・スワップ取引…金利や通貨などをあらかじめ約束した条件で交換する取引。
        FX(外国為替証拠金取引)などがあります。

 オプション取引とは、デリバティブの一種であり、ある原資産について、あらかじめ決められた将来の一定の日または期間において、一定のレートまたは価格(行使レート、行使価格)で取引する権利(オプション)を付与売買する取引です。オプション取引のレバレッジ率は30倍となるリスクの高い商品です。

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 左表にレバレッジ取引きをまとめて示しますが、リスクの高いものから、オプション、商品先物、仮想通貨、不動産投資、株の信用取引と続いています。このレバレッジ効果を上手く活用して大きく投資をし、お金を稼ぐことは可能ですが、そこには大きなリスクが存在します。

通貨オプション取引

 通貨オプションとは、円やドルやポンドなど、ちがう国の通貨を交換する、いわゆる外国為替取引に関連するオプション取引です。例えば、「3ケ月後に、200万$を、1$=115円の価格(円相場)で、売る権利を、500万円のプレミアムを支払って、買った」というのが、通貨オプション取引の例となります。この例の場合、権利を行使すれば、ドルを売って円に交換することになります。これは「ドル売り、円買い」と呼ばれる外国為替取引の権利となりますから、ドルを売ることに注目すれば、ドルプット・オプションと呼ばれます。しかし、外国為替取引としては、ドルを売ることで円を買うことになりますから、これは円コール・オプションと呼んでもいいことになります。正式には、ドルプットと円コールを併記して表示すべきなのでしょう。日本経済新聞の金融面(マーケット総合面には、丁寧に「円コール・ドルプット「と「円プット・ドルコール」と書かれています。

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 コール・オプション(買う権利)を売った側は、売る義務があるからといって、常に売ることにはなりません。ただし、ここが一番大切なところですが、相手の買う側は、自分が有利な条件のときだけオプションを行使しますから、コール・オプションを売った側(売る義務を持つ側)からすれば、自分が相対的に不利なときにこそ、売る義務を果たさなければならなくなります。

 以上の話から、もう一度、オプションの基本となる4つのパターンを整理してみます。
ここでは、①と②がセットで、③と④がセットとなります。
① コール・オプションの買い…プレミアムを支払うことで、通貨や株式を買っても
買わなくてもいいという選択権を得ます。
② コール・オプションの売り…プレミアムを受け取る代わりに、通貨や株式を不利な条件
で売らなくてはならない危険性を負います。
③ プット・オプションの買い…プレミアムを支払うことで、通貨や株式を売っても売ら
なくてもいいという選択権を得ます。
④ プット・オプションの売り…プレミアムを受け取る代わりに、通貨や株式を不利な条件
で買わなくてもならない危険性を負います。

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ドルコール・オプションの買いと売り

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 3ケ月後にドル決済で宝石を売り渡すことになっています。その時点でドルが手元に入るので、ドルを円に交換する必要があるわけですが、その際にドル高・円安であれば為替益が望めます。そのために、現時点で3ケ月後を満期日で1ドル=100円が権利行使価格のドルコール・オプションを、プレミアムを払って購入しました。

 満期日の円相場が1ドル=100円よりも円高・ドル安ならば、権利行使はしません。しかし、予想通り、3ケ月の間に円安・ドル高になっていて、満期日には1ドル=110円になったとします。すると、このドルコール・オプションは権利行使され、オプションの買い手は利益を得ます。具体的には、次のような手順で取引すれば、利益を実現できます。

 その時点の円相場である110円よりも安く、100円でドルを買う権利を持っているのですから、まずはこの権利を行使して、100円で1ドルを手に入れます。そしてこの1ドルを銀行に持って行き、その時点の円相場である110円で売ればいいのです。100円で買ったドルが110円で売れるのですから、差額の10円が1ドル当たりの利益になります。

 オプションが行使されずに放棄されると、利益はゼロです。しかし、オプションが行使されると満期日の円相場と権利行使価格の差が1ドル当りの利益となります。

 例えば、オプションの売り手が、元々ドルを持っていないとすると、どこからかドルを110円で買ってきて、相手に100円でドルを売ってやる必要があります。1ドルにつき10円の損失が生じます。もし、オプションの売り手が元々ドルを持っていたとしても、そのドルは相手が権利を行使しなければ、現在の円相場である110円で売ることができるのに、それをオプションが行使されることで、100円で売らなければならないのです。だから、10円の損失に変わりありません。

ドルプット・オプションの買いと売り

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 一方、3ケ月後にドル決済で宝石を購入す.ることになっています。その時点で円をドルに交換し、ドルを手元に準備しておく交換する必要があるわけです。そのために、現時点で3ケ月後を満期日で1ドル=100円が権利行使価格のドルプット・オプションを、プレミアムを払って購入しました。予想では3ケ月後はドル安になっていると考えている訳です。

 満期日の円相場が1ドル=100円よりも円安ならば、オプションは行使されません。しかし、予想通り、3ケ月の間に円高・ドル安になっていて、満期日には1ドル=80円になったとします。すると、このドルプット・オプションは権利行使され、オプションの買い手は利益を得ます。具体的には、次のような手順で取引すれば、利益を実現できます。

 具体的には、その時点で100円でドルを売る権利を持っているのですから、まずはこの権利を行使して、100円で1ドルを売ります。手元のドルを銀行へ持って行き80円で1ドルを買い戻せばいいのです。100円で売ったドルを80円で買い戻せるのですから、差額の20円が1ドル当たりの利益になります。

 一方で、もし満期日に円安になっていて、1ドル=120円だったら、普通に120円で売れるドルをわざわざ100円で売るのはもったいないですから、ドルプット・オプションは放棄されます。

 オプションは保険に似ていますが、オプションが保険と大きく違うのは、保険は保険会社が保険という商品を売り、顧客である企業や個人が買いという、売り買いの立場が決まっているのに対して、オプションは銀行が売って、顧客の企業や個人が買うということもあれば、逆に顧客がオプションを売って、銀行が買うこともあるという点です。

貿易と通貨オプション

 ドルなどの外貨で輸出を契約している企業が、為替リスクについて考える場合には、つぎの4つのパターンを比較することになります。

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図Aの損益図

 輸出の為替リスクをまったくヘッジしないで放置した場合には、図のAの損益図に直面することになります。

図Bの損益図

 これに対して、為替予約を利用して、3ケ月後に1$=100円で1万$を円に替える予約をしたとします。為替予約ですから、円相場がどうなろうと輸出代金は必ず1$=100円で円に交換されますので、為替差損や差益は生じません。このときの損益図はBのように水平になります。

図Cの損益図

 ドル・プットオプションを買うと、損益図はCの形になります。

図Dの損益図

 最後に、1$=100円が権利行使価格の1万$分のドル・コールオプションを売るという選択肢もあります。これによってドルを売る義務が生じ、もし円安になると権利は行使されますが、その時には、輸出代金として受け取ったドルを1$=100円で売ればいいと考えるのです。円高になったときには、権利は放棄されますが、輸出代金として受け取るドルは、その時点の円相場で円にしなければなりませんから、為替差損が生じます。ただし、どちらにしてもプレミアムを受け取ることができます。

 また、外貨で預金・債券。株式などの運用をする個人も、輸出企業と同様に、将来ドルを円に替えることになりますから、その様な外貨での資産運用時の為替リスクも、やはり同じように考え対処すべきです。

 図Bの様に、差損も差益もない状態を望むのなら、いつも輸出や外貨資産の金額に合った為替予約を結べば良いのですが、円安時には、為替差益を狙いたいと考えると、図のAやCを選ぶことになります。

 同じ為替差益を狙うのでも、円高時の損失を一定に抑えたいのなら、オプションを買ってCの損益図にすべきですが、プレミアムを支払いたくないなら、オプションも為替予約も利用せず、Aの損益図で勝負することとします。

 そして、オプションの売却のプレミアムを狙うのがDです。これは一般投資家に多い。多くの貿易会社がドルコール・オプションの買いを必要としてくるので、このオプションを売って儲けようという戦略が成り立ちます。

 この基本パターンを十分に認識して、為替リスク対策を考えることが重要です。

 売買する権利を売買するのがオプション取引です。みるからに面倒な取引にみえますが、みなさんどう思われますか。



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