中小企業診断士の経験則…BS, PL, CF表の具体的作成方法

 小水力発電の事業計画およびバイオマス発電の事業計画では、設備投資額が大きいことと、これらを金融機関からの融資で賄うことが多いため、初年度の資金繰りが非常に重要となります。そのために、立ち上げ時のBS, PL CF表の詳細な数値展開が必須です。今回、自動計算ソフトによる具体的な数値計算例を紹介します。

画像の説明


画像の説明

1. 損益計算書(P/L)の処理

(1) 売上高
  ・FIT売電(打込)
  ・その他売電(打込)

(2) 売上原価(SUM)
  1) 小水力発電
   ・電気主任技術者委託費(打込)
   ・水路管理委託費(打込)
   ・メーカー点検費(打込)
   ・事務委託費(打込)
   ・流水占用料(打込)
   ・保険料(打込)
   ・地代等(打込)
   ・その他、人件費等(打込)
   ・固定資産税1.4%(補助表)…初年度は0、2年目より発生
   ・減価償却費(補助表)

(3) 売上総利益(売上高-売上原価)
  1) 販売費及び一般管理費
   ・販売、一般管理費(打込)
   ・寄付金(打込)

(4) 営業利益(売上総利益-販売・一般管理費-寄付金)
  1) 営業外収益
  2) 営業外費用
   ・支払利息(補助表)

(5) 経常利益(営業利益-支払利息)
(6) 法人税30%…経常利益がマイナスであれば0
(7) 税引き後当期利益(経常利益-法人税)

2.P/L処理上の注意事項

① 消費税は、
 ・初年度は決算期と確定申告時期のずれでなし。
 ・2年目は未収消費税にて処理。
 ・3年目は通常の未払消費税(消費税借受-消費税仮払)で処理

② 消費税の扱い
                 19年     20年   21年
 ・未収消費税           -   24,825    -
    ・未払消費税        -    -    2,644
    ・消費税借受        -    2,952   3,013
    ・消費税仮払        -    27,777    369

  * 未収消費税24,825=消費税仮払-消費税借受=27,772-2,953
  * 消費税仮払27,772=支払経費(電気主任技術者委託費+水路管理委託費+
   メーカー点検費+事務委託費+保険料+その他人件費等+販売一般管理費+
   設備費)×0.08=27,777
  * 流水占用料、地代等、固定資産税、減価償却費は消費税対象経費から外す。
  * 消費税借受2,952=売上高36,900×0.08
  * 未払消費税2,644=消費税仮払-消費税借受=3,013-369

3.貸借対照表(B/S)の処理

(1) 資産
  1) 流動資産
    ① 現金・預金(キャッシュフロー表)
    ② 未収消費税(別計算)

  2) 固定資産
    ① 機器設備(補助表Round)…初年度も減価償却費発生

  3) 負債
    ① 未払消費税(別計算)
    ② 未払法人税等(P/L 法人税・30%)

  4) 固定負債
    ① 長期借入金(補助表)…初年度も元本+利益発生。

(2) 資本
  1) 資本金(振込)

  2) 特別修繕積立金(打込)

  3) 利益剰余金(税引後当期利益-特別修繕積立金)

4.B/S処理上の注意

  ① 法人税の扱い…経常利益がマイナスであれば0。

5.キャッシュフロー

(1) 営業活動
  ① 当期利益(税所得割引前)…P/L
  ② 減価償却費…P/Lの減価償却費
  ③ 運転資金の減少
   (前年度未収消費税-今年度未収消費税)
     +(前年度未払消費税-今年度未払消費税)
     +(前年度未払法人税等-今年度未払法人税等)
    経費分は当期利益に含まれる、B/Sの項目が対象。
  ④ 営業活動からのキャッシュフロー
    当期利益+減価償却費+運転資金の減少

(2) 投資活動
  ① 設備投資による支出(補助表…設備投資合計)
  ② 投資活動からのキャッシュフロー(-設備投資による支出)

(3) 財務活動
  ① 長期借入(補助表・Round借入
  ② 長期借入元本返済(補助表:-Round元本返済)
    実際に現金が動いているのは元本分のみ
  ③ 財務活動からのキャッシュフロー
   長期借入-長期借入元本返済=370,000-20,239=349,761

(4) キャッシュフロー計:
  現預金増減=財務活動からのCF+投資活動からのCF+営業活動からのCF
  ① 期初現預金残高(資本金)
  ② 期末現預金残高(キャッシュフロー計+期初現預金残高)

6.キャッシュフローの注意点 
 
  ① 利息返済はP/Lに計上しているので、C/F表では当期利益の中に含まれている。
   従って、C/F表の中で利息返済分は表示されない。
  ② B/Lの中の当期の長期借入金には、元本返済と利子返済を合計した値が表示されて
   いる。従って、C/Fの中では元本返済のみを表示すれば良い。

7.補助表での注意点

  ① 固定資産税は、決算と確定申告のずれあり。従って、初年度は表示されず2年目
   から。
  ② 固定資産の評価額は初年度より現れる。初年度の評価額は通常の半分。
  ③ 当年度の固定資産税は、前年評価額×0.014(税率)

8.キャッシュフロー表の構成

   ① メイン…損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー表(C/F)
   ② サブ1…固定資産税、減価償却計算書、資金返済計算書、保険料表
   ③ サブ2…パラメーター表

  (1) 発電所情報パラメータ
  (2) 初期費用入力項目
  (3) 補助金
  (4) 地方債
  (5) 維持管理費
  (6) 諸税
  (7) 固定値
  (8) 工事費計算書パラメーター
  (9) 工事費自動計算パラメーター
  (10) 建屋構造

9.設備投資合計(設備取得)342,600,000

  ① 土木設備…2019年度期中取得 取得価格(税抜) 183,600,000
  ② 機械設備…2019年度期中取得 取得価格(税抜) 141,300,000
  ③ 建物  …2019年度期中取得 取得価格(税抜)  17,700,000

10.消費税関連

  ① 消費税は、仮受が仮払より大きいと、余分に納める必要がある。利益面では
   マイナス。
  ② 消費税は会社の収入ではなく、国等に納めるものですから、売上高という収入は
   消費税抜きの額で計上します。
  ③ 仮受消費税等は、一時的に会社が預かり、後で国等に納付しますので、負債
   として計上します。
  ④ 税抜き処理
  ⑤ 消費税等の入金または支払は税金を一時的に預ったり、仮払いしたことであって、
   企業の収益または費用ではないので、これを仮受消費税等または仮払消費税等に
   計上し、収益、費用または資産に含めない会計処理をいう。
  ⑥ 借入金の扱い…資金の借入と返済は、対価性がないので課税対象外(不課税)、
   利 息の支払いは非課税です。利息は貸し手が貸さなければ、その資金を使って、
   自分の利益にできたという理由で、借り手に請求する損害賠償的な性格があると
   考えた場合、消費税を課すことが適当でない取引で非課税である。

11.消費税処理について

  ① 消費税は、販売(受入れ)と購入(支払い)で差がでるが、その差額は会社の
   ものではなく、国に納めるべき性格のお金である。
  ② 消費税は、基本的に決算期と確定申告期のずれがあるので、次年度処理となる。
  ③ 従って、決算表上は、
    ・ 初年度は表記なし。
    ・ 2年目は、前年度分をB/Lの未収消費税の上に、(仮受-仮払)の差額分を
      計上する。これは一旦流動資産として会社内に置き、支払いの原資として
      処理。
    ・ 3年目からは、前年度分の仮受け・仮払いの差額をB/Lの未払消費税の上に
      置き、(仮受-仮払)分を計上し、処理する。
  ④(仮受-仮払)がプラスだと未払消費税。(仮受-仮払)がマイナスだと未収
    消費税に計上する。いずれも1年は置くのでB/Lに計上する。

12.B/L, P/L, C/F表について

  ① 貸借対照表は、営業年度が終わった時点で、その瞬間にどれだけの財産(資産)・
   借金(負債)・元手(資本)があるかを表します。
  ② 損益計算書は、その営業年度内にどれだけのキャッシュを稼ぎ出して、どのくら
   い投資にキャッシュを回し、また、キャッシュを調整して手元にいくら残っている
   という資金の流れを表します。
  ③ 貸借対照表や損益計算書は、発生主義会計で作成されているため、ここに記され
   た損益は、直接「おカネ」とは結びついていません。発生主義会計では商品を販売
   すれば代金の入金がなくても売上という収入が計上されますし、原材料を仕入れれ
   ば、代金を支払ってなくても費用という支出が計上されます。
  ④ ですから、損益と資金残高の増減は一致せず、損益計算書で利益を上げてい
   ても「おカネ」が足らなかったり、その逆に、利益は少しでも「おカネ」に結構
   ゆとりがあるような場合があります。
  ⑤ 損益計算書の利益は必ずしもキャッシュの裏付けがあるわけではなく、ここに俗に
    いう「勘定合って銭足らず」という状況が発生します。
  ⑥ これに対して、キャッシュフロー計算書は、売上があっても入金されるまでは収入
   に計上されませんし、仕入れを行っても支払うまでは支出に計上されません。文字
   どおり現金主義によって作成される決算書がキャッシュフロー計算書です。

 今回、BS, PL, CFを具体的に計算してみると、設備の減価償却費、固定資産税、消費税、融資の返済、資本金額など初年度にきっちりとしておかなければならない項目が沢山あることに気が付かされました。皆さんも具体的な計算を一度やられるのが良いと思います。



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