中小企業診断士の経験則(その9)…中小企業診断士の5つの選択

画像の説明

 2020年3月の企業診断ニュースで、企業内診断士の実態についてのアンケート調査結果が特集として組まれました。今回のブログでは、企業内診断士の典型的働き方を紹介すると共に、自分自身のこれまでのキャリア照らし合わせ、自分のやり方がどのタイプに相当するのか色々と考えてみました。

 中小企業診断士は、「企業内診断士」と「独立診断士」に大きく2つに大別されます。全体の割合では、企業内診断士が多いのは明らかです。しかし、企業内診断士と一括りにしてしまうと、その多様性が薄れてしまいます。なぜなら、企業内診断士の資格の生かし方には、いくつかのスタイルが存在するからです。

 企業内診断士のスタイルは、下記の4つに分類されます。

1. 資格を現在の仕事に生かしてキャリアアップを目指している企業内診断士
2. 副業・兼業制度を利用して活動している企業内診断士
3. 資格を生かして転職し、企業内診断士としてさらにステップアップをしている企業内診断士
4. 企業内で独立の準備をする企業内診断士

 これら4つのタイプについて、具体的に実践している診断士から、その体験談のエッセンスを紹介したいと思います。

1. 資格を現在の仕事に生かしてキャリアアップを目指している企業内診断士

画像の説明

 A氏はSCSK㈱に勤めながら企業内診断士としての資格を業務に活かしています。SCSK社には、社内在籍の中小企業診断士有志のコミュニティであるSCSK診断士会が設けられており、A氏も同会設立メンバーの1名です。A氏の場合、資格を持っていることをきっかけに、自分が一番やりたいと思っていた部署に引っ張ってもらえました。このことが、非常にうれしかったと言います。現在はその異動を機に、全社的な事業戦略や経営企画に携わっており、この企画系の仕事は現在に至るまで約10年間続けているそうです。

2. 副業・兼業制度を利用して活動している企業内診断士

画像の説明

 B氏はNTTデータ通信㈱に勤め経営管理の仕事をしながら、中小企業診断士の副業も積極的にこなしています。B氏は研究会、診断士会にも所属していることに加え、城北支部の活動も行っており、所属団体数は10を超えるといいます。では、どのような基準で所属団体を選んでいるのでしょうか。B氏いわく「明確な基準というものはありません。面白そうだと思った団体に積極的に顔を出した結果、今に至っているとのことです」。また、時間の作り方については、有給休暇や夏季休暇を合わせると、月当たり2日は休める計算になります。そこでこの休暇の取得を、本業に影響のない日で、2~3ケ月前に予定登録し、その日は完全に診断士活動に従事することにしているそうです。

3. 資格を生かして転職し、企業内診断士としてさらにステップアップをしている企業内診断士

画像の説明

 C氏はNTT西日本に12年ほど勤め、その後KJホールディング㈱に転職しました。きっかけですが、これまでNTT西日本で経験してきた業務の中で、新入社員の採用活動や社内研修などの人の成長や人とのかかわりがある業務に携わっていたときが一番楽しかったとわかったことです。そこで、今後の自分のキャリアを考えたとき、このままずっと情報通信系で進むのではなく、教育系の業界にかかわり、専門知識や経験を積みたいと真剣に思うようになりました。

4. 企業内で独立の準備をする企業内診断士

画像の説明

 D氏はキヤノン販売㈱や大手コンサルティングファーム等に24年間務めた後、大阪でIT経営事務所を開設しました。学生のときから「独立」を念頭に置き、24年間サラリーマンとして企業に勤めました。そんななか、診断士資格を取得したのを機に、47歳でかねての思いを果たしたわけです。小さい頃、親が脱サラして商売を始めたのを見ており、いずれ自分もそうするのだと思っていました。そして「いつか独立したい」という思いは、企業に勤めながらもずっと持ち続けてきたとのことです。今後は、必要とされているところで自分のパワーを使い、もう働けませんというところまで最前線でコンサルティングをやって行く思いでいるそうです。

自分のタイプについて

 ところで私の場合はどのタイプに相当するのか考えてみます。私は60歳定年までは企業内診断士として資格を業務に生かす道を選び、退職後は独立して事務所を開設しました。現在は収入を安定させるために、ベースロードとしてのコーディネーター活動と個別案件のコンサルタント活動の2つに分けて活動しています。

画像の説明

 なぜ、中小企業診断士の資格を取ろうと思ったのかそのきっかけですが、1995年当時まで遡ります。私は、ある装置の開発に携わっていました。ようやく実用化の目途が立ち、新分野事業部としてやって行こうというところでした。マーケティングを中心とした事業戦略の打合せをしていた時のことです。私も、販売計画書を前に皆と一緒になって意見を述べていたところ、技術部から来た部長から、研究所出身の人間に経営のことが分かるのかというようなことを皆の前で言われてしまいました。その時の悔しさは今でも忘れません。それならばということで、中小企業診断士の資格を取ろうと思い立った訳です。

画像の説明

 1999年4月に鉱工業部門での中小企業診断士資格を取得し、企業内診断士として活動を開始しました。幸運なことに資格を取得した直後に、経済産業省傘下の特殊法人NEDOへの出向が決まりました。NEDOでは国プロといわれるプロジェクトの管理を担当することになりますが、プロジェクト参加企業の技術力や開発力を目利きする機会を持ちました。Only One技術とはいかなるもので、どの様に作り上げるかを理解する眼を持つことが出来る様になりました。また、国プロは補助金で動く訳ですが、この補助金のマネージメント手法を学ぶことができました。

 2002年4月にD社の研究所に戻り、研究企画の仕事を担当しました。ここでも診断士として、研究開発が会社の経営にどのように関わって行くのかを学ぶことができました。

 その後、2005年4月、57歳の時にD工業大学のリエゾンオフィスへ異動になりますが、ここでは国プロである「燃料電池」の開発管理業務を担当することになります。NEDOでの経験が大いに役立ったことは言うまでもありません。

画像の説明

 2008年3月に60歳定年退社して中小企業診断士として独立します。独立するに当って、自分自身のOnly Oneを発揮できるところは、中小企業の現場ではなくて、中小企業と大学あるいは研究機関を結び付ける産学連携分野であると考えていました。従って、独立すると同時に、M大学およびN信用金庫という金融機関を働き先として選択しました。これがベースロードとしてのコーディネーター業務です。

 私は特殊鋼メーカーの研究職出身ですので、生産現場を熟知している訳ではありません。従って、工場の原価管理や生産管理と言われても、はっきり言って、この現場の改善に当ってのポイントは何かと言われても、ピンと来るものはありません。しかし、研究職出身ということで、診断の対象としている企業には、今、どの様な技術が求められているのか、また、その企業が今後、どの様な技術開発をすれば伸びて行くのかは、企業の保有する技術を見るだけでピンと来るものがあります。

 企業内診断士として活動するにしても、独立診断士として活動するにしても、自分にしかできない領域を必ず持つことが絶対条件であると考えていますが、皆さんどう思いますか。



コーディネーター's BLOG 目次