学習教室講師の世界(その15)…数学が登場した印象に残る映画の場面

 もう、30年来のゴルフ仲間に川津さんがいます。彼は、いささか変わった経歴の持ち主です。1981年に滋賀大学経済学部を卒業後、現在のパナソニックに勤務しました。その後1985年に父親の死去にともない不動産業を継ぐために名古屋に戻りました。しかし、経営理論に大きな関心があるのか、不動産業を営みながら2002年に愛知学院大学の博士課程に学び、経営学博士号を取得しています。これまでに6冊ほど不動産に関する書籍を出版しています。私もほとんどに目を通しました。

2000年 「不動産投資マネージメントの戦略」 晃洋書房
2002年 「不動産投資の成長メカニズム」 清文社
2004年 「不動産投資戦略」 清文社
2006年 「ハイレバレッジ不動産投資」 清文社
2008年 「リスクを移転し始めた不動産投資市場」 清文社

 その川津さんから2021年6月19日に、私のスマートフォンに突然下記メールが送られてきました。「ビューティフルマインドという映画知っていますか? 一度見て下さい。」

 彼からは、以前にも「Money ball」「The Big short」という映画についても、一度見て見ないかといわれ、いずれも直ぐにDVDを購入しました。

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 2011年制作の「Money Ball」の方は、選手からフロントに転身し、若くしてメジャーリーグ球団アスレチックスのゼネラルマネージャーとなったビリー・ビーンについての物語です。ビリーは自分のチームの試合は観ません、腹が立つと人やモノに当たり散らす短気で風変りな男です。ある時ビリーはイエール大学経済学部卒のピーターと出会います。ピーターが主張するデータ重視の運営論に、貧乏球団が勝つための突破力を見出し、周囲の反対を押し切って、後に「マネーボール理論」と呼ばれる戦略を実践していきます。当初は理論が活きずに周囲から馬鹿にされますが、ビリーの強い信念と挑戦することへの勇気が、誰も予想することの出来なかった奇跡を起こすことになります。

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 「The Bib Short」は、2008年に起ったリーマンショックの時の、4人のアウトサイダーの物語です。4人は銀行の犯した全米史上最大の詐欺行為を暴きました。この信じがたい実話に基づく物語は、債務担保証券CDOを扱ったもので4人全員がリーマンショックの時に大ばくちを打ち、大金持ちになります。やはり数学を基本にした投資に関する映画で、何回も何回も見直しました。

 「CDO」という金融商品は、様々な債券を組合せてリスクを分散させて、リターンを大きくさせた証券のことです。リスクを分散という意味は、安定ではあるが人気のない利率の低い債権(AAA, AA)や危険ではあるが人気の高い債権(B, サブプライムローン債券)を色々と組み合わせることです。リターンが大きいということは、人気が出て多くの投資家が購入することです。金融市場においても、誰もが自由に買えて、“お得”だと思われていましたが、関係者も何が入っているのか理解していないというのが実態でした。サブプライムローンといった、無担保審査なしで借りた低所得者のローン債券(破綻が目に見えているもの)がたくさん含まれていたのです。それをよく見ようともせずに、私利私欲のために格付け会社はAAA(安全)と評価しました。それを信じて疑わなかった多くの投資家が損をみたのです。リスクの高い債券は購入価格が高くなります。しかし、設定利率が高いので、その分十分に配当がもらえて儲かるのです。

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 さて、今回は「A Beautiful Mind」です。天才数学者でノーベル賞学者であるジョン・ナッシュの一生を描いたものです。ジョン・ナッシュは天才ではありましたが、統合失調症を患い精神病院に通いながら研究を続けていました。映画「A Beautiful Mind」は天才数学者としての偉業と成功、及び統合失調症に苦しむ人生を描いた作品です。

 映画のストーリーですが、ナッシュは天才数学者であるがゆえに国際的な諜報活動に巻き込まれます。ところがこの国際的な諜報活動は彼の統合失調症により引き起こされる幻覚的なものでした。かれの異常行為は周りからおかしな目でみられることになりますが、妻アリシアのみが献身的な愛でただ1人夫を支えます。映画ではナッシュとアリシアとのやり取りが見ものです。

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 記録によりますと、彼の統合失調症は1959年(31歳)から始まり、1960年代には精神病院に通いながら研究を続けています。1970年(42歳)ごろから快方に向かい、1990年は症状が出なくなったと言われています。

 このような統合失調症という精神病と闘いながら彼は研究を続け、1994年(66歳)にゲームの理論の経済学への応用に関する貢献により、ラインハルト・ゼルテン、ジョン・ハーサニと共にノーベル経済学賞賞を受賞しました。

 映画での圧巻の場面は、ノーベル賞授賞式でのセレモニースピーチで、長年彼を支えてきた妻アリシアに向けた感謝の言葉を述べる場面でした。




 さて、今回川津氏が私に「A Beautiful Mind」の映画を紹介して、何を言いたかったのかと言う点が気になります。「Many Ball」では、会社経営では数学というかデータを大事にするべきだよということであったと思います。私も(有)クレバープラニングという小さな会社を32年間運営していますが、データは非常に大事にしてやってきました。「The Big Short」では、アメリカの不動産市場で起こったリーマンショックの裏側をしっかり把握することが大事で、その中で不動産債務を担保にした悪名高きCDOの真の姿を数学というものを使いながら炙り出すべきだということを何度も言われました。

 さて「A Beautiful Mind」では、彼は何を言いたいのか。彼がこの映画を進めてくれる少し前に、日本RITE投資信託を用いた長期投資戦略の話を彼との間で交わしています。これに関係あるなと思って色々と調べていたら、ジョン・ナッシュはゲーム理論を著していますが、このゲー理論の中に長期投資戦略に関する部分が含まれていました。

 早速ジョン・ナッシュのゲームの理論に関する本を購入しそれを理解したいと思っています。今度彼に会った時、どういう意図で私に「A Beautiful Mind」を紹介したのか聞いてみようと思っていますが、みなさんはどう思われますか。



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