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平成27年度三重大学人文学部海外留学生インターンシップ事業を終えて

三重大学のインターンシップ事業

 インターンシップでは、企業や団体などの職場で実際の仕事を経験し、働くとはどんなことかを体験する場が学生に提供されます。インターンシップを経験することによって、学生は実際の職場での社会人の考え方、仕事の進め方、職場の雰囲気などに触れることができるので、将来の進路を考える上では非常に貴重な機会となります。

 三重大学のキャリア支援センターでは、学生の企業や団体へのインターンシップ制度を取り入れて運営しています。統計年度は異なりますが、日本全体および三重大学でのインターンシップ実施率は下記となっており、まだまだ低いことが判ります。

・平成23年度 日本の大学生数 約290万人  
             インターンシップを受けた大学生数 約33万人
             インターンシップ実施率  約11%
・平成26年度 三重大学の大学生数 6,134人
              インターンシップを受けた大学生数 283名 
                 インターンシップ実施率  約4.6%

海外留学生のインターンシップとは

 上記キャリアセンターの進めるインターンシップ事業では、海外留学生も日本人学生と同様であるとみなして進めています。

 しかし、海外留学生で日本の企業や団体に就職する希望を持っている学生の割合は非常に少ないのが実情です。それにも関わらず、海外留学生がインターンシップをやりたいという理由は、留学後の本国での就職活動において、単に留学経験があるというだけでは、必ずしも評価されないという状況があり、留学時における社会貢献活動やインターンシップなど、実践的活動経験の有無が、企業等での採用時には重視されるという事情があるようです。

 三重大学には、平成26年度は海外留学生が全学で286人、その内人文学部が80人です。国別でみると、中国157人、タイ20人、インドネシア15人と東南アジアの国々からの留学生が大半を占めています。

 今回、我々が進めた「人文学部海外留学生インターンシップ事業」は、北伊勢上野信用金庫、三重大学四日市フロントと連携し、外国人留学生に対して、単に就職活動の一環と制限するのではなくて、教育現場、生産現場、文化・伝統現場、というパッケージで提供するものです。

 留学生に実践的教育の機会を与えるということのみに留まらず、三重県北勢地域の企業へも、国際的ネットワーク形式の可能性を提供するという観点で実施しました。この様な点を重視している国内の大学は未だ少なく、新しい試みだと考えます。

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中小企業にとってのインターンシップとは

 平成26年から中小企業庁が、海外展開の実施・検討に向けた人材確保の観点などから、外国人留学生の採用等に関心のある中小企業や日本企業への就職を目指す外国人留学生等を支援するための事業として、「地域中小企業の海外人材確保の定着支援事業」を進めています。

 具体的内容としては、次の様なものです。
①中小企業向け外国人材採用・活用セミナー、留学生向け就職活動ガイダンス・インター
 シップ等の実施
②中小企業と外国人留学生のマッチング(留学生合同企業説明会や企業人事担当者と留学生
 の交流会の開催等)
③外国人従業員の定着支援(内定者研修会や外国人社員研修会の実施等)

 この様に、国においても、中小企業が海外展開を進めるに当り、海外留学生を日本でインターンシップさせることが有効であると考えています。

 今回、北伊勢上野信用金庫の顧客である中小企業に海外留学生インターンシップの受入れ先として登録して頂けるように企業回りを進めて来ました。その結果、表に示す様に、製造業、食品業、サービス業、物流業、金融業を対象に約9社に受入れ先として登録していただけました。

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 企業回りを進めている中で、企業によってそれぞれインターンシップを受け入れる意図が異なることが分かりました。大きく分けて4つに類別できます。

 1つは、すでに海外へ進出しているまたは進出を考えている中小企業です。
現地での採用で優秀な人材は大企業に全部持って行かれるため、日本でのインターンシップで将来自分の会社に就職してもらえる様に目途を付けておきたい。

 1つは、反対に日本への回帰で日本に工場を戻した中小企業です。
日本人労働者を雇っていたのでは賃金が高過ぎて無理。再度海外から家族ごと労働者を連れて来て、日本で働いてもらいたいと考えている企業です。

 1つは、優秀な留学生と知り合いになり、そのネットワークを活用したいと考える中小企業。留学生には帰国後政府関係の要職に就く可能性が高いことから、インターンシップでそのネットワークを作ることを意図している中小企業です。

 1つは、地酒の様に海外展開を考えている中小企業です。
インターンシップが終了した後、ツィッターやフェースブックで友人等に発信してもらい、自社の商品を知ってもらうことを意図している場合。

というように、色々なニーズがあります。

海外留学生と中小企業のマッチングの難しさ

 受入れ企業探しの段階では、地域の中小企業を対象に金融業務をやっている北伊勢上野信用金庫と連携しました。特に会長自らのトップダウンで支店へインターンシップ事業へ協力指示を行ってもらいました。その結果、10社の受入れ候補企業が上がり、最終的には5社でインターンシップを行いました。その結果、製造業、食品業、サービス業、物流業、金融業等々、色々な企業に受入れをお願いすることが叶いました。

 実施時期は平成27年8月に10日間程度ということで、マッチングを開始しました。しかし、企業が望む海外留学生への条件と海外留学生が企業に望む条件がそれぞれ異なるため、これを上手くマッチングさせることがいかに大変であるかを経験しました。

 具体的には下記の様な問題が発生しました。

・製造業では、現場での作業が入るため、安全靴の着用が義務付けられている。安全靴を
 海外留学生に準備させるのか。
・工場等が遠隔地にあるため、寮に入る必要かあるが、外国人ということで食事の問題等
 扱いが難しい。
・通勤の場合には、最寄りの駅までの送り迎えをどうするか。
・業務の都合上、黒いスーツ、黒い革靴の着用が条件となっている場合があるが、これを
 誰が準備するのか。
・日本人学生と一緒にインターンシップを実施しなければならず、特別メニューを準備
 できない。
・日本語をある程度マスターした学生でないと、対応できない

等々です。来年以降はこれらの経験を生かして展開して行きたいと考えています。

金融機関のインターンシップ内容

 今回のインターンシップ受入れ企業の1つ、北伊勢上野信用金庫でのインターンシップ期間は5日間でしたが、信用金庫の役割から預金業務、融資業務についての座学、営業店における具体的な業務マナー、企業訪問活動の実務経験、等々幅広く金融業務を経験してもらう内容となっています。

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インターンシップに対する海外留学生の感想

①学生A 製造業でインターンシップ
 ・日本人の働き方と時間の大切さを学んだ。

②学生B 食品業
 ・日本独特の日本酒の製造工程を経験できた。日本の文化に触れて良かった。

③学生C 製造業
 ・日本語の敬語の難しさを味わった。

④学生D サービス業
 ・遅刻等は日本企業ではやってはいけない等、暗黙のルールがあることを知った。
 ・日本企業に入るのに役立った。

⑤学生E 金融業
 ・日本の銀行、特に信用金庫が地方の為に頑張っていることが判った。

 これらの感想を聞いていて、今回の留学生の皆さんの目的には、大きく3つに分かれていることを確認した。
1つは、将来の就職を考えて職場を知る。
1つは、自分の人生経験のためにやる。
1つは、日本の文化を知るためにやる。
です。

 なお、終了式では伊勢新聞の取材を受けていますので、紹介します。

今後に向けて

1.四日市市との連携の中で進める。
 四日市市といった地方公共団体との連携の下で、一部補助金を活用しながらやって行く
 のも1つの方法です。

2.受入れ企業の登録制を進める。
 海外留学生と中小企業のマッチングは、両者がそれぞれ条件を出すので合わせるのが難
 しい。やり方として、中小企業にはあらかじめ受け入れ先企業として登録して頂いて、
 これに海外留学生から応募してもらう方式を取ることを考えたい。募集の際には、企業
 がどの様な業種で、何をインターンシップでやらしてもらえるのかを明示して行く必要
 があります。

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