BCPの基本方針

 2011年8月26日、午後1時から、じばさん三重4Fにおいて、三重大学公開講座 四日市地区リスクマネジメント研究会「企業防災・BCP(事業継続計画)セミナー」を実施しました。これは、災害などが起こった時に、企業が自社の業務をいち早く回復させ、いかに事業継承していくかについて考えるものです。

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 大学の公開講座としては非常に実践的な内容となっており、一連の講座を通じ、各参加企業はそれぞれ自社の防災計画を検討立案していきます。

 第一回目となるこの日は、およそ20社が参加し、講義を受講、またディスカッションを行いました。

 会では、まず、主催者である三重大学社会連携研究センター 武田保雄センター長より挨拶が述べられました。「三重大学としても初めての取り組みです。できるだけ皆さんの力になれたらと考えています。6回に渡る長丁場になりますが、ここに参加されている担当者の方は、成果や検討課題を持ち帰り、社内でも共有化・具体化をぜひ行ってみてください」。

 この研究会での成果は、あくまでもモデル的なものです。実際には、各企業の立地条件や建屋の構造、業務内容、従業員数等々によって、防災計画は異なります。このセミナーでは、各企業内で防災計画を立てるにあたって、ベースとなる考え方・手法を学んでいきます。

 本セミナーの企画者でもある四日市フロント 渡辺 俊博コーディネーターより、注意事項や説明のオリエンテーションがあった後、講義が開始されました。

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 第一回目となる今回は、「BCP基本方針の考え方」と題し、人文学部法律経済学科の青木雅生准教授から講義が行われました。

 「戦後、ものづくり産業の2~3割が、輸出を前提とするビジネスモデルをつくりあげてきました。東日本大震災によって、影響をうけた企業は数多くあります。リスクマネージメントが有事のさいに役立つか、結局のところ予想はできません。みなさんとともに考えて、一緒につくりあげたいと考えています」。

 災害時に、どのような姿勢・方針でいち早く業務を回復させるのかを、まずは明確にする必要があります。そのためには、自社の業務などをよく分析することで、優先させなければならない事項を明らかにしていきます。

 BIA(Business Impact Analysis:業務影響分析)は、不測の事態が発生したとき、業務が中断した場合の影響を定量的・定性的に評価する分析手法です。業務の復旧優先順位、目標復旧時間、復旧に必要な経営資源(ヒト・モノ・カネ)を明確にしておくことが必要です。また、業務停止による売り上げ損失、発生する違約金、影響をうけるユーザー数、影響をあたえる取引先数など、定量的に把握します。さらには、社会的な評価や信用の失墜、従業員の士気低下、社会に与える影響など、定性的な評価項目についても分析を行っていきます。

 BIAの分析手順としては、下記のような流れです。
 ①事業を支える業務の洗い出し
 ②業務が中断することによる影響の特定
 ③業務復旧優先度の決定
 ④目標復旧時間・目標復旧レベルの設定
 ⑤各業務に必要なリソースの特定(例:どのような力量をもった人材を何名)

 分析の基本的な考え方がわかりやすく説明され、参加したメンバーらは真剣な表情で講義を聴講していました。

 ディスカッション風景

 また、2部として、参加企業同士がグループを組んで行うワークショップも行われました。

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 各グループには、講師や専門家も参加し、参加者は助言を得ながら問題解決の糸口をさがしていきます。

 ディスカッションは各企業の自己紹介から始まり、メンバーの中で、四日市における過去の災害事例に詳しい人物や企業から話を聞いて、全体で情報共有を行っていきます。第一回目は、BCPの基本的な考え方について理解され、会は熱のこもったものとなりました。

 このセミナーでは、12月まで全6回を通じて、各企業は防災計画を策定していくこととなります。次回、第二回となるBCPセミナーは、9月16日です。ダイジェストについては、またこの特集にてご紹介予定です。