想定される地震被害と被害想定

 2011年9月16日、じばさん三重4Fにおいて開催された『三重大学公開講座 四日市地区リスクマネジメント研究会「企業防災・BCP(事業継続計画)セミナー 第二回」』の模様を特集します。

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 第二回目となる今回は、前半として、三重大学人文学部 前田定孝准教授より「想定される地震被害と被害想定」と題し講義が実施されました。

 東海・東南海・南海の地震規模、津波のレベルや、ライフラインの被害想定などをメインに、企業の被害想定や被災時に期待される企業に役割などについて説明が行われました。山崩れの瞬間や、新幹線の倒壊現場などの様子に、参加者は真剣な様子で聞き入っていました。

 オリエンテーションが行われた後、後半がスタートです。

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 写真は四日市市の液状化危険度分布図です。

 ピンク色で塗りつぶされたエリアが液状化の危険性が極めて高い地域です。およそ半分ほどが危険であることがわかります。そのほか、福知山線事故時の日本スピンドルの対応など、企業が被災時に地域に貢献した事例なども報告されました。


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 また、四日市フロント 渡辺 俊博コーディネーターより、阪神淡路大震災などの過去の災害事例について、動画での説明などが行われました。土砂災害の瞬間や新幹線の倒壊現場などの映像に、参加者は真剣に見入っていました。

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 また、2部として、地域地震情報株式会社の川合一明氏を講師に、災害想定訓練(DIG)の準備が開始されました。
 ①災害に関する、ありとあらゆる知見を集めること
 ②地域でどんなことが起こるかをディスカッションすること

 準備として、今回は、四日市の地図をもとにすすめていきます。「これは、あくまでも練習であり、皆さんの会社、敷地、周辺で何が起こるかについて自社で検討すること、それがゴールですよ」と講師の川合氏。

 2グループに分かれ、四日市の内陸部および沿岸部の地域の現状把握、そして災害・被害想定を行っていきます。

【設定条件】
•東海・東南海地震・南海連動の海溝型
•発生日時:2011年12月10日 15時ごろ
•震源:駿河湾/熊野灘/室戸岬沖
•規模:最大M8.7
•震度:最大6強
•津波:熊野灘沿岸 最大10m 四日市港 最大3m

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 防災マップや古地図(明治時代の四日市市地図)などを参考に、まずは地形の把握からです。各グループで、司会進行・発表者などを決めて、議論をすすめていきます。

 自然条件、都市構造、人的物的防災資源などを、地図に書き込みながら、地域の災害に対する強さ・弱さを確認します。

 市街地の位置、海岸線の位置、山と平地の境界線、河川や池沼の位置とともに、現在の宅地が昔はどのような場所であったかなど、昔の自然条件も同時に確認していきます。消防署や警察所、ヘリポートなどの官公署・災害救援にかかわる機関・施設、食料や日用品、燃料の販売店、重機を保有する企業など、地域防災上役立つ施設などの確認も行います。転倒・落下、倒壊した時に危険となる施設なども把握しておくべきポイントです。

 それぞれ対応するシールを貼り、視覚的にわかりやすくしていきます。

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 またカラーペンで、液状化や浸水被害が想定されるエリア、土砂災害が想定されるエリアなどに、印をつけていきます。実際のところ、明確な答えはなく、あくまでもグループでのディスカッションで過去の災害情報や地形図から話し合った独自の想定です。

 これらの想定の下、地域の防災上の問題点や課題、防災対策などを情報共有していきます。

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 最後に、各グループがディスカッションした内容を報告しました。

 沿岸部グループは、まずコンビナートでの火災と、ビルや密集した民家において建物の倒壊を想定しました。およそ1時間後には、津波が予想され、一時避難として三階建て以上の建物への自主判断が大切なこと、市街地の幅の広いメイン道路は津波の道になってしまう危険性があること、地下の駐車場は水没の危険性があることなどを予想。四日市特有のものとして、埋没ガスパイプが二次災害を引き起こす点も指摘されました。

 また「防潮堤は、伊勢湾台風後にできたので、揺れには強いのではないか」といった意見も報告されました。

 内陸部グループは、丘陵地などで土砂崩れの危険性があること。古い家屋が密集する地帯での倒壊、避難所にたどり着けない人がいる可能性なども想定を行いました。また、近鉄線のレールが埋まる危険性、ガソリンスタンド火災などについても指摘しました。

 「内陸部までの津波被害はないと想定しましたが、災害時に大雨だった場合、増水した川を遡上し、洪水や浸水被害はでると予想されます」といった意見も報告されました。