第5回 ロボット技術で変える地域産業

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 四日市市民大学「21世紀ゼミ」今年度最後となる第5回講義が、1月18日(水)18:30~20:00 じばさん三重4階研修室にて開催されました。今回は、三重大学大学院工学研究科機械工学専攻矢野賢一教授に「ロボット技術で変える地域産業」と題して講演をお願いしました。

 まず、矢野講師からは、「医療・福祉ロボットや超高齢社会に向けた農作業や家庭での軽作業を1人で行うことができるパーソナルモビィリティの開発においては、手足に障害を持つ方の自立支援や機能回復を目的としたエンジニアの発想だけでは限界があります。医学、解剖学、心理学、デザイン科学などの複合的な知識が必要となります。」と介護ロボットの位置付けについて説明がありました。
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 矢野講師は、これまでの食事支援ロボットの開発を通して学んだこととして、下記3つを挙げられました。

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 1つは、福祉施設への介護支援ロボット導入の難しさの問題です。グループホームでは、職員の介護の世話があまりにも忙しくて、なかなかロボットを介して世話ができないという事情があります。



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 1つは、福祉用具開発および事業化環境の問題です。福祉業界は用具開発のための十分な資金があるわけではありません。その様な状況の下、医療ロボットで1台3億円、介護ロボット開発には1,500万円内外の開発資金が必要となり、なかなか研究開発は難しいと言えます。



 1つは、介護を受ける患者さんの生きる喜びの実現です。今、産業界ではIoTとAIの融合システムが脚光を浴びていますが、医療・福祉ロボットシステムは、モノとモノを繋ぐIoTの他に、人の意見をも繫げるということで、より難しい領域の技術開発になるようです。

 現在の一般的な福祉ロボットに対する考え方は、介護支援用具をずっと装着しておくことを前提としているとのことです。これは、介護者ができるだけ楽であるにはどうしたら良いのかという目線であり、障害者の立場に立ったものではないということです。

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 障害者の立場に立つなら、ずっと用具を付けていなくても、外しても良い様な状況を作り出すことが必要です。これは、動かさないために死んでいる筋肉を生き返らせる様な新しい形のロボットを開発する必要があるというものです。

 最後に、矢野講師は「人を遠ざけるロボットではなく、人と人を結び付けるロボットがこれからは必要です。」と、講義を締め括られました。