歴史に学ぶ(No.4)-印象主義からキュービズムへの転換

 次に1907年の金融恐慌前後の芸術の変化を見てみます。

 恐慌前は表現主義というものが流行していました。表現主義とは、視覚と技法を一新して強烈な色彩による感情表現を行なう手法です。1893年のムンクの「叫び」は、20世紀の表現主義の出発点となりました。極度な設定のもと独特のタッチで描かれた人物、血のように赤く染まったフィヨルド(氷河で形成された北欧独特のU字谷)の夕景と不気味な形、赤い空に対比した暗い背景。この絵を見ていると、こちらまで顔がゆがんでしまいそうです。それほど強烈な表現です。後年、この絵は遠近法を強調した秀逸な構図の作品と言われるようになりました。

 そして、1907年の金融恐慌の後にはキュービズムというものが現われます。これは立体派とも言われ、形態と構成における革命をもたらしました。1937年のピカソの「ゲルニカ」では、スペイン内戦の折に、バスク地方の小さな村ゲルニカが、フランコ将軍に協力するナチス・ドイツ空軍の無差別爆撃を受けて、女性や子供を含む多くの犠牲者を出しました。死んだ子を抱き泣き叫ぶ母親、天に救いを求める人、狂ったようにいななく馬などが戦争の悲惨さを訴えています。フランコに反対する共和主義者のピカソにとって、それは絵筆による激しい抗議でありました。戦争の悲惨を人々に強く訴えた絵で有名です。

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