地球温暖化を考える(No.3)-ツバル環礁の海水面上昇

 ノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏の「不都合な真実」の映画に対して、2007年10月にイギリスの高等裁判所は、「9ケ所の事実誤認」があるとする判決を下しました。今回は第2番目の判決内容について追ってみます。

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 アル・ゴア氏は、太平洋上の環礁サンゴ島では、海水面の上昇に伴い、太平洋の海抜の低い島国に住む人々は、すでに家から避難しなくてはならなくなっていると主張しています。環礁サンゴ島とは、海中にマグマが吹き出している「海底火山」が水没した後、海面に環状のネックレスのような形のサンゴ礁の輪が残ったものです。写真はポリネシア・ツバルの首都フナフティの高潮の様子で、まさに住宅が水浸しになっています。これに対し、判決は何等証拠とはなっていないとしています。

 ツバルでは十数年前から、毎年2月から4月にかけての大潮の満潮時に洪水が発生する現象が起こっています。データを見ますと、基準点から3mを越える満潮が起こるとフナフティでは至る所で洪水が発生するのです。ツバルの様な環礁の島は、内部が珊瑚礁の堆積物で出来ているので、海水がその中を通って表面に湧き出して来ていると考えられています。

 その他、ウェブサイト上でも多くの具体的な事実が紹介されています。例えば、同じ太平洋上にあるクリスマス島では、干潮では眼前に広がる砂浜が、満潮になるとほとんど見られなくなるというものがありました。クリスマス島は、平均海抜が他の島よりちょっとだけ高く面積も大きいのですが、それですら安心できる状態ではないというものです。

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 また、別の具体例として、インド洋のモルディブ諸島も同様の危険に直面しています。モルディブの首都マーレ島では、1987年に高潮に襲われて大きな被害が出ました。日本の無償援助で護岸工事が施されましたが、海抜は2m程度です。無償援助も限界がありますので、その内何も出来ずに沈んでしまう島が出てくるでしょう。

 これらの具体的な写真呈示や事例報告に対し、イギリスの裁判所は、これらのものは証拠にはならないとし、まだ住人が避難しなければならないような状況には至っていないと判断した訳です。このあたりの判断を皆さんはどう思われますか。
                 伊藤幸生

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