地球温暖化を考える(No.5) - 「海洋コンベアベルト」の異変

 イギリス高等裁判所が、アル・ゴア氏の「不都合な真実」の映画に対して2007年に下した9つの判決のうち、第4番目が今回紹介する「海洋コンベアベルト」の異変に関するものです。今回の判決は、地球規模でメビウスの輪となって動く海の海流の話で、これまでの何れの異常現象よりも大きなスケールとなっています。

 下図に示します様に、海のすべての海流は繋がっていて、ひとつの大きなメビウスの輪のようになっています。この輪は「海洋コンベアベルト」と呼ばれます。図の輪の赤い部分は、暖かい海面を表しています。良く知られているのは、米国の東海岸に沿って流れるメキシコ湾流です。一方、青い部分は、逆方向に流れている冷たい深層水の流れです。北大西洋で温かい水が蒸気となって蒸発しますと、あとに残る水は、水温が低いだけでなく、塩分が高くなります。水が蒸発しても、塩分はそのまま残るため、塩分濃度は増すわけです。そこで、水はぐっと重くなり、毎秒約2,000万m3という、膨大な量の水がゆっくりと沈みこんで行きます。この水が、海底に向かって真っ直ぐに落ちて行き、南へ向かう冷たい海流の始まりとなります。

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 メキシコ湾流からもたらされる熱がヨーロッパへと運ばれるお陰で、パリやロンドンでは、ほぼ同じ緯度にあるモントリオールやノースダコタ州のファーゴよりずっと暖かくなります。マドリッドとニューヨーク市の緯度は同じですが、マドリッドの方がずっと暖かいのです。このように、地球の気流と海流のパターンは、1万年前に最後の氷河期が終わって以降ずっと安定してきました。

 しかし、ウッズ・ホール研究センターのルース・カリー博士は、温暖化のせいでグリーンランドの氷が急速に溶けていることを憂慮して、北大西洋の海洋循環崩壊が21世紀中に起こる可能性があるとしています。アル・ゴア氏も、この見解を支持して映画の中で警告を発しています。

 イギリスの裁判所は、この点を問題視しているようです。1万年も何もなかったのに、21世紀中というこの100年間に、大西洋を暖めている湾流が本当に活動を停止するのかという訳です。ゴア氏の主張は、それはめったに起こらないとする気候変動国際パネルの見解と矛盾するという判決です。

 さて、地球温暖化が進むと、それによってメキシコ湾流の流れが止まり、ヨーロッパが寒冷化することになります。その結果、やがては氷河期が来て人類は滅亡するというわけです。こればかりは起こって欲しくないと思います。皆さんはどう判断しますか。

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