地球温暖化を考える(No.6)- アフリカ・チャド湖の消滅

 2007年にアル・ゴア氏のドキュメンタリー映画「不都合な真実」に対し、学校における上映を差し止めるという判決が、イギリス高等裁判所により出されました。事実誤認だとするものが全部で9ケ所ありますが、そのうちの1つが今回紹介するアフリカ・チャド湖の消滅問題です。
 
 アフリカ・チャド湖の消滅とは、下の写真に示しますように、かつては世界で6番目に大きな湖だったものが、僅か40年の間に姿をほぼ消してしまった現実を指します(アル・ゴア著「不都合な真実」より転載)。湖が消散してしまったことから、魚場は崩壊し、作物も獲れなくなり、何百万人もの人が移住を余儀なくされ、さらに多くの人々が危険にさらされています。

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 チャド湖の干ばつの原因としては、これまで次の3つが議論されてきました。
 1. 周辺諸国での大規模な灌漑 
 2. 地球温暖化による気候変動
 3. 湖周辺の砂漠化

 現在、干ばつの原因は1番目の周辺諸国での大規模な灌漑説が有力だと言われています。特にナイジェリアは、移民を奨励し周辺人口も増加しましたが、水の利用効率は極めて低い状況でした。すなわち、無駄な水の消費が多かったわけです。そのため、チャド湖への流水量は1960年代以前の平均400億トンから半減以下の150億トンにまで減少してしまいました。

 2番目に挙げた原因こそ、アル・ゴアが主張する近年の地球温暖化などの気候変動説です。しかし、この点については、まだ議論が行われています。彼の主張は次のようなものです。20世紀の降水量は、温暖化に伴ってそうなると予想された通り、全体的に増加しています。しかし、気候変動が降水量に与える影響は、どこでも全て同じという訳ではなく、実際には降水量が減少している地域もでてきます。これほど大きく変わってしまうと、特に、アフリカのサハラ砂漠のへりに位置する地域は、降水量が減少して破滅的な影響を受けているというものです。

 また、3番目の原因ですが、チャド湖近傍には植物が生育する植生地域が広く存在することで、過放牧が行われ、湖周辺の砂漠化が進んだことが挙げられています。

 以上見てきましたように、チャド湖の消失は、周辺諸国での大規模灌漑、局地的気候変動、砂漠化の3つの要因が重なり合って起きたと考えた方が、妥当であるように思えます。

 イギリス裁判所の判事は、アル・ゴアが、チャド湖の消滅を全て気候変動に原因があるとしている点に文句を言っている訳です。科学的根拠に基づく証拠が見付けることができないのに、どうしてそういうことが断言できるのかと指摘しました。さて、皆さんはどう思われますか。

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