CO2の排出権と企業活動(その2)-J-VER制度

 前回ご紹介したカーボンオフセット活動は、企業が義務ではなくて自主的に責任範囲を定めてCO2削減に努めるところに意義があり、未達成部分はクレジットを購入することで相殺することができました。その際、購入できるクレジットとしては、現状では京都議定書に基づくクレジット、J-VER制度に基づくクレジットの2つが認められています。

 ここで、京都クレジットは京都議定書に基づいて国連が発行するクレジットであり、海外で創出されます。一方、J-VER制度に基づくクレジットは、環境省が発行するクレジットであり、国内で創出されるものです。どちらのクレジットを購入するかについては、自社で取組んでいる活動と、どちらが上手くマッチングするかということで選択することになりそうです。

 今回紹介するJ-VER制度は、環境省が平成20年11月に制定したものです。温室効果ガス(CO2)の排出者によるカーボンオフセットの資金を、木質バイオマスの利活用を推進するCO2排出削減プロジェクトや間伐等の森林管理等で実現するCO2吸収プロジェクトを行う事業者へ還流して、地球温暖化対策と雇用や経済対策を一体的に推進することが目的となっています。これらプロジェクトで実現されたCO2削減量またはCO2吸収量をカーボンオフセットに用いるクレジットとして認証しています。

 例えば、三重県大台町では、「自然と人々が幸せに暮すまち」を基本理念に掲げて、自然環境の保全と地域の活性化のための各種の取り組みを行っています。そうした取組みの1つとして、J-VER制度によるクレジットの販売収益を活用して、森林整備や地域新興につながる「大台町オフセット・クレジット事業」を進めています。具体的には、大台町が所有する森林1,597haのうち間伐等の整備を行ない、「森林管理等によるCO2吸収量」がJ-VER制度に適合する人工林として認可されています。

 この大台町オフセット・クレジットを活用して、カーボンオフセット活動を進めておられる株式会社環境思考(以下K社と略します)の取組み内容はなかなかユニークなものです(下図参照:K社資料より転載)。

画像の説明

 仕組みとしては、一般消費者の家庭で出た古紙、アルミ缶等のリサイクル資源物を持ち込める回収BOXを、ロードサイドや協賛のスーパーマーケットの駐車場等に設置しています。古紙等を回収BOXに投入し、隣に設置されたポイント機に専用のポイントカード(IC)やお財布携帯機能付き携帯電話をかざすと、CO2がどれだけ排出されたか表示され、カーボンオフセットできる仕組みです。

 リサイクル資源物の回収活動は、事業者のCO2削減責任範囲の部分と、CO2削減不可能な部分に別けられます。削減不可能な部分とは、例えば古紙を回収BOXまで運ぶ時の自動車のガソリン使用であるとか、回収された古紙を再生業者へ持ち込む際の自動車の燃料消費が相当します。そこで、これらCO2削減不可能な部分を、J-VER制度に基づくクレジットを購入することでオフセットすることになります。

 K社にしてみれば、クレジット購入分は、全て自社の環境コストになります。しかし、K社がこの様な活動をしていることは、一般消費者に十分に認識され、この回収センターをどんどん活用しようという気持ちを一般消費者に与えることは確かです。そしてこの方式が全国的に広がって行けば、環境ビジネスモデルとして成立しそうでが、皆さんどう思われますか。



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