CO2の排出権と企業活動(その4)-京都メカニズム・CDM制度

 CDMは、途上国で実施される温室効果ガス削減活動です。先回、排出権を購入する大企業と、CO2排出削減事業を実施する中小企業が共同で事業を実施し、CO2排出削減を実施したときに、その削減分を排出権として設定する国内クレジット制度を紹介しました。その中で、大企業を先進国、中小企業を発展途上国に置き換えれば、そのままCDM制度になります。簡単に言い換えますと、CDMは途上国でCO2削減プロジェクトを実施し、その削減を排出権として先進国に売却する仕組みのことです(下図参照:日本スマートエナジー出典)。

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 CDMは京都議定書に基づいて温室効果ガスの削減を推進する京都メカニズムの1つであり、途上国で実施されることがポイントです。京都議定書は1997年に発効していますから、14年の歴史のある制度です。ところが、CDM制度は、国が絡む事業ですので、事業費が100~2,000億円程度になります。CDMは途上国で実施される巨大なCO2削減事業で、なかなか中小企業がこれに関わることは難しいと言えます。

 コラボ産学官の会員企業であるグローイングジャパン㈱殿では、生産販売しているA重油に廃天ぷら油を混合したNEF燃料と冷凍機をセットにして、インドでホテル・レストランを経営する事業者に対し、省エネルギー・環境の面で有効なディーゼル発電およびその排熱を利用するコジェネ冷凍システムの技術移転を検討しています。

 ただ、この件がCDM制度として動くかどうかは、日本がインドで展開する巨大事業の一環にこの事業が組み入れられるかどうかと大きく関ります。大手商社を巻き込んでの展開に持ち込む必要がありそうです。

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 ところで、発展途上国でのCDM事業の実施実績は、下図に示す通りで、インド、中国、ブラジルと続いています。トップのインドでは、2003年以降、既に多くのCDM案件を承認した実績を有しており、2010年6月1日現在、CDM理事会でのインドのCDM登録件数は506件で、総登録件数の約20%を占めています。事業の内容も、バイオマス、風力発電、廃ガス・廃熱利用、水力発電の順となっており、再生可能エネルギー案件が多くを占めています。

 インドと中国でCDMのやり方を比較しますと、かなり様相が異なって来ます。中国では新興国の顔として先進国からの資金を導入して再生可能エネルギーの調達を図り、その見返りにクレジットを提供するというやり方を取っています。インドは中国とは少し異なり、むしろ投資を自国でどんどん進め、クレジットを先進国に売って、これをビジネスとして展開していく方法を取っています。

 いずれの方式が進むにしても、このCDMによって、先進国の温室効果ガス削減技術の向上が停滞したりといった悪い面での影響を懸念する声も上がっています。皆さんどう思われますか。



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