福島原発事故による混乱(その1)-福島原発事故を混乱させた同心円避難

警戒区域と避難指示区域の概念図

 今回の原発事故では、事故発生後の政府の避難指示の出し方が厳しく非難されています。「放射性物質の拡散予測システム(SPEEDI)を活用せず、自治体への連絡も遅れ、住民の避難方法や経路に混乱が生じた」と、政府の事故調査・検証委員会は指摘しました。

 図に示します様に、政府は当初、避難指示の範囲を同原発から同心円で設定し、20キロ圏まで順次拡大しました。しかし、放射性物質の拡散は、気象条件などにより異なります。中間報告では、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を活用していれば、「住民はより適切な避難方法を選べた」と批判します。

 SPEEDIとは、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムで、原発事故の際、放射能物質の放出状況のデータ(放出源情報)や気象条件、地形情報と共に、放射性物質の大気中濃度や被爆線量などの影響を予測、住民避難などに役立てるため、約120億円を投じ整備されたものです。

 福島第1原発事故では、地震でデータ伝送ができなくなったため放出源情報が得られず、本来の予測ができなかった、としています。しかし、官邸の中で、SPEEDIを運用する文部科学省の担当者は常駐せず、経済産業省の人間ばかりで、縦割り行政の問題が見え隠れしているようです。

チェルノブイリセシウム汚染レベル

 一方、チェルノブイリ事故は、1986年4月に起きました(下図参照)。実験運転中の原子炉が制御不能に陥って暴走し、分厚い原子炉のふたを吹飛ばす程の大爆発により、大量の放射線物質が北半球のほぼ全域に飛び散りました。半径30km以内は住めなくなり、十数万人が移住しました。被爆による犠牲者は4,000人~9,000人です。


国際原子力事故評価尺度(INES)

 福島第一原発の事故について、経済産業省原子力安全・保安院は、2011年4月12日、国際原子力事故評価尺度(INES)で最も深刻な事故に当たるレベル7を暫定的に評価すると発表しました。これまではレベル5でした。INESはレベル7の評価基準として、数万テラベクレルを越える放射性物質の放出を挙げています。

 チェルノブイリと同程度の規模の深刻な事故ということは、結局福島第一原発の周辺には、よほど除染が進まない限り、今後住むことのできない地区が出現するのではないでしょうか。皆さんどう思われますか。




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