福島原発事故による混乱(その2)-放射能被害の恐怖

 福島第一原発事故では、燃料であるウラン235の入った燃料棒のメルトダウンが起こりました。これにより、有害な放射線物質が大気中に放出され、風に乗って遠くまで広がり、雨で地上に落ちて大地を汚染したと考えられます。

 今回は、原子力発電や原爆の基本的原理である核分裂連鎖反応とはどういうものかを一緒に眺め、どういった放射性物質が大気中に放出され、人体にどのような影響を及ぼすのかを見てみたいと思います。
原爆と原子力発電所

 核分裂連鎖反応では、核分裂を簡単に起こすウラン235が主役です。これは天然に存在する物質です。原子核が中性子を1つ吸収すると、ウラン235は大変不安定になり、二つの原子核と幾つかの高速中性子に分裂します。この中性子が別の原子核に吸収されれば、連鎖反応が起きます。この崩壊家庭は発熱反応ですので、この性質を利用して、一度に大量の熱を生成する事ができる訳です。これが原子力発電や原爆の基本原理となります。

図に沿って核分裂反応をもう少し具体的に見てみます。

核分裂反応

Stage1. あるウラン235原子核が1個の中性子を吸収し、2個の新たな原子核(核分裂片)に分裂します。同時に3個の新たな中性子といくらかの結合エネルギーを放出します。

Stage2. 放出された中性子のうちの1個が核分裂を起こさないウラン238原子核に吸収される場合は、反応は続きません。別の1個の中性子は、他の原子核と衝突せずに失われます。この場合も、反応は続きません。しかし、残りの1個の中性子は、別のウラン235原子核に衝突します。この原子核は、核分裂を起こして2個の中性子と結合エネルギーを放出します。

Stage3. ここでは、放出された中性子は2個で、2個とも別のウラン235原子核に衝突し、それぞれ核分裂を起こして、2~3個の中性子を放出します。こうして、反応が持続して行きます。

 原子力発電事故に伴なう放射能汚染の原因となる主要三物質は、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137の3種類で、これら物質の崩壊に伴い有害な放射線であるα線、β線、γ線を放出します。年齢および摂取パターンによって、人体への影響は変わって来るようです。これら3種は軽いため、飛び散り易く、人体に摂取されやすい水溶性の物質であるため要注意となっているのです。

 ヨウ素131は半減期8.06日で、ウラン235等の核分裂によって生成されます。チェルノブイリ原子力発電所の事故でも、大気中に大量に放出されました。ヨウ素は甲状腺に集まる特徴があるため、幼児に大きな放射線障害を引き起こしました。安定ヨウ素剤を24時間前までに飲んでおけば、放射性ヨウ素が体内に入っても、90%以上を排泄できると言われています。

 セシウム134とセシウム137は、放射性同位体であり、質量数が134と137のものを指します。やはりウラン235等の核分裂によって生成します。半減期はセシウム134が2.06年、セシウム137が30.1年と、半減期の長いセシウム137の方が厄介者のようです。体内に入るとセシウムは体中に分配され、ベータ線による内部被爆を起こします。

 第二次世界大戦で日本は広島・長崎が唯一原子爆弾の攻撃を受けて、多くの方々が亡くなり、今でも放射能障害で苦しんでおられる患者がいます。戦後、この悲惨な原爆に使われた原子力技術を人類の平和のために活用しようと、原子力発電の開発が他国にも増して一生懸命おこなわれてきたはずです。

 ところが、巨大地震という災害に遭い、それの被害を受けた原子力発電が今や悪の根源の様な扱われ方をされています。勿論、安全に対する備えは重要です。しかし、原子力発電をゼロに持って行くということには、戦後一生懸命育んできた原子力技術は無駄になってしまいます。この様な状況にあるからこそ、日本は原子力発電の安全を確保するための技術開発を進めるべきだと思います。新たに原子力施設を増設するということではありません。現状を維持した上で、安全に対する技術を開発するのです。皆さんどう思われますか。

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