福島原発事故による混乱(その4)-遅々として進まない除染

 NHKテレビで除染特集をやっていました。その中で、同心円避難のトバッチリを受けた家族を紹介していました。避難した先が風向きの影響を受け放射能汚染量が逆に大きくなり、何のために逃げたのか意味がないというものでした。しかも、避難所に入るため2時間程、年間20ミリシーベルトもある外に並んで放射線を浴びたというわけです。その結果、子供たちの甲状腺にしこりが見付かりました。年間20ミリシーベルトというのは、計画避難区域に相当するもので、そこでの放射線量がいかに多かったか想像できます。

 原発事故による環境汚染対策の方針は、年間の追加被爆線量を1ミリシーベルト以下(時間当り0.23マイクロシーベルトに相当)にすることなどを長期的な目標としています。そして国は除染に要する費用を負担することを約束しています。

除染作業工程

 この除染作業における工程は、図の様になります。除染後、仮置き場へ持って行き、その後、中間貯蔵施設に保管されます。そして、最後には最終処分場へ運ばれるというものです。しかし、一番の問題は、受け入れ先がなくて中間貯蔵施設が確保できないということです。


 国は除染について1つのマニュアルを示しています。しかし、場所や時期によってマニュアルの内容が、必ずしも適切であるとは限らないようです。反対に除染度合を悪化させてしまうことの例も多く報告されており、いかに除染が難しいものか想像されます。
 

農林水産省が実証した除染技術

 一方、福島第一原子力発電所の事故で、土壌が汚染された福島県内では、農業復興に向けた試行錯誤も続いています。農林水産省と福島県は、土壌中の放射性物質を取り除く「除染」の実証実験を進めています。

 現在下記の3つの方法を試行中です。

1つ目は,重機により表土を剥ぎ取り、別の場所に埋める。(左図のA、B、C)
2つ目は、水田に水を入れ、土を砕く「代かき」をし、排水時に放射性物質を吸着する。(左図のD)
3つ目は、セシウムを吸い上げる効果があるとされるヒマワリなどを栽培する。(左図のF)

 汚染の強弱や農地の特徴に応じた最適な除染方法を採るとしています。

 しかし、1つ目の土を剥ぎ取る方法では、剥ぎ取った土を別の場所へ持って行くことになります。別の場所に埋めれば、そこが汚染されてしまいます。また、どこの県も剥ぎ取った土を埋めても良いという許可を与えるはずがありません。

 2つ目の水で土をかき混ぜて上澄みを除去する場合には、吸着剤としてゼオライトが考えられています。しかし、ゼオライトは確かにセシウムを吸着するのですが、他の元素も同時吸着するので、その効果が減殺されているという問題があります。

 3つ目の植物でセシウムを吸収という方法では、根は地中に伸びるので表層のセシウムを本当に吸収できるのかという問題が考えられます。

 除染の問題解決には、これからまだ随分と時間がかかるように私には思えますが、皆さんどう思いますか。




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