日本の制約条件(その1)-少子高齢化問題

 先日、あるエコノミストから非常に有意義な話を聞きました。日本は今、「原発ゼロの問題」「エネルギー問題」「社会保障問題」「TPP」等々、様々な課題を抱えています。こうした課題を考えるに当って、まず、心に留めるといいますか、物事を考える前提条件として、次の三つを絶対に外してはならないというものです。1つは少子高齢化問題であり、1つはGDP(国民総生産)の成長死守であり、1つは世界第2の債務残高です。

 何故外してはならないのでしょうか。それは、これを外すと日本が潰れてしまうからです。日本が潰れたら、いくら原発ゼロだエネルギーだと言っても、議論にならないからです。私自身も納得が行きましたので、今回からこの問題を取り上げてみたいと思います。

 図は、日本の年齢別の人口を示した図です。日本は、団塊の世代の63~65歳人口割合が最も多く、若い世代になるほど人口が減っているのが良く判ります。最も多い世代の63~65歳が3,000万人で全人口の30%、20~23歳が500万人で全人口の5%と大きな差を示しています。

少子高齢化

 この現象は、世界にも例がなく、日本は参考にする国はありません。反対に、世界中から日本は一体どの様にこの問題を扱うのか、着目されているというのが現状です。

 少子高齢化問題で引き起こされる最も大きな問題は、社会保障制度、特に年金問題でしょう。人口の少ない若い世代が、人口の多いお年寄りの年金を支払う構図です。今までは、10人で1人の高齢者の年金を負担していたものが、4人に1人になり、3人に1人になりと、高齢者を支援して行くのが負担になって来ます。これはいずれ年金制度の破綻が来るように思います。そこで、政府は子供を育てやすい生活環境を作ることが必要として、少子社会対策を1994年頃から始めていますが、効果が出ているようには思えません。また、金銭的にだけでなく、近所付き合いもなくなりがちになり、老人の孤独死なども増えてきています。

 少子高齢化は国全体の経済にも影響を及ぼします。65歳までの定年延長義務付けが、2013年から始まりますが、会社側は賃金体制の変更で大変になります。また、労働力人口の減少を通しての労働投入量の減少も考えられます。更には、高齢化によって退職世代が増加することが予想でき、これは貯蓄を行なう年齢層に比べ取り崩す年齢層が増加することを意味し、一国全体の貯蓄が減少することが考えられます。

 少子高齢化の急速な進展は、科学技術創造立国を支える人材についても、不足が懸念されています。専門的・技術的職業従事者に占める中高年齢層の比率の上昇が進んでおり、今後もこの傾向が続くものと思われます。団塊の世代の60歳一斉退職が最も多く発生する「2007年問題」もありました。多くの技能技術を持った人々が会社を去り、技術継承の問題をどうするのか。海外への技術流出の懸念もあります。

 この様に、少子高齢化の問題は、確かに色々な問題を考えるに当り、その制約条件として考えておくべき事柄のように思いますが、皆さんどう思われますか。

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