米国シェールガス革命の裏側(その4)-景観を犠牲にしたワイオミング州

 コロラド州のほぼ真上に位置するワイオミング州も州全体がシェールガス田で覆われています。


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 ワイオミング州では、まず、ジェフ・ロッカーとロニダ・ロッカーへのインタビューから始まりました。ロッカー夫妻は、1990年からフラッキング井戸を所有してきました。その後何年かして、一度ガス井戸を再掘削したことで、水が黒色に変わってしまうという問題が出て来ました。夫妻はガス会社を訴え、損害賠償金として21,000ドルを得ましたが、その代わりに非公開契約という条件を飲まざるを得なくなったのです。一旦会社側と非公開契約を結ぶと、何か問題が起きてもこれを公表することはできなくなるのです。

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 案の定、妻のロニダは水を飲んでから非常に病気がちになってしまい、水を濾過するフィルターシステムを導入しました。しかし、フラッキングに用いる化学物質がこのフィルターシステムを腐食してしまうので現在非常に困っているとのことでした。

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 次に、ルイス・ミークスを訪ねました。ルイスは2004年からガス井戸を持ちました。その後飲料水がガスの様な臭いを発し始めたので水を調査しました。その結果、淡水化物とグリコールエーテルを含んでいることが判りました。それにも拘らず、ガス会社はそれを修復することはしませんでした。また、ルイスに損害賠償金を渡すこともしませんでした。

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 そこで、ルイスは自分自身で新規の飲料水用井戸を掘削しました。ところが飲料水用井戸から天然ガスが3日間吹き出し爆発を起こしました。ルイスは再度地質学者を雇い、水を調査しました。飲料水にはフラッキングの化学物質と天然ガスのすべてが混ざり合っていることが判明しました。


 次に訪れたジョン・フェントンとキャシー・フェントンの土地には24のガス井戸があります。ジョンは「規則が何もないので、それぞれの会社が、それぞれの方法で掘削している。しかも誰もそれをチェックできない。貯蓄槽が時々ガスを排出し、毒性のある蒸気で家を取り巻いてしまう。それによって妻のキャシーは多くの健康障害を持ってしまった。」と不満を述べます。更に妻のキャシーは「ガス会社が掘削をすればするほど、そこに住んでいる人々はどんどん去って行きます。その結果、住人がいなくなってしまうと、土地の掘削権を持つガス会社は好き放題に掘削をやり始めるのです。」と言います。

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 ワイオミング州でのここまでのインタビューでは、これまでのペンシルベニア州やコロラド州と同様に飲み水が完全にフラッキングで使う化学物質や天然ガスで汚染され、それを長期間飲用して病気なってしまうというものでした。
 しかし、ワイオミング州ではもっと独自の問題がありました。石油会社が来る前には、多くの美しい岩肌の景観があったのです。石油会社が井戸を掘削することで、それらは破壊されてしまいました。破壊するには1日かかるだけです。もう何も残りません。この景観を作るのに何万年かかった母なる自然を潰すのに、重機械で数時間でできてしまうのです。

 特にワイオミング州サブレット郡は、公立の土地であり、人々がキャンプを楽しむ場所であり、将来の世代の健康のための土地でした。

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 ところが、副大統領のディック・チェイニーによって率いられているエネルギー特別調査団は、2001年にBLM(土地調整局)に対して、オイルとガスを掘削するための土地として貸し出すための新しい方策を見付けるようにと要求したのでした。結果、チェイニーは、BLMを説得し、破砕と掘削を行うガス会社に数百万エーカー貸し出すことになりました。それはいわゆる公共の地を私有の地という歴史に残る最大の転換策と呼ばれています。

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 エネルギー革命という名のもとに、人の体が蝕まれ、自然が破壊されるという事態が進行しつつあるように見えますが、皆さんはどう思われますか。









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