米国シェールガス革命の裏側(その9)-ペンシルベニア州環境保護局の冷たい対応

 ペンシルバニア州から始まり、コロラド州、ワイオミング州、…、…、テキサス州、ルイジアナ州の25州を巡るインタビューの旅もほぼ終わりました。その中、この旅から帰って来た時に、水質検査機関からペンシルバニア州デミックで採取していた水の分析結果が出ているとの連絡が来ました。

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 その結果は驚くべき内容でした。まず、バリウム、ストロンチウム、鉄、クロムの含有量が非常に高い値を示していました。そのために、通常純水は導電率はゼロですが、検査した水はチャートの目盛を振り切ってしまうほどの高い値を示していました。更に、最も恐ろしいことは、全てのサンプルでケルダール窒素とMBASという物質が検出されていたことでした。


 MBASはメチルブルー活性物質と呼ばれているもので、窒素と接触すると青色に変わります。洗剤に多く使われている物質で、MBASはその分解効果によって、生体の表面から油や他の表面活性剤を通してしまいます。そのため、流域の川では多くの魚が死んでしまいました。この様なMBASが含まれている水を飲み水として用いられていること自体が異常です。
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 これらの事実を知らされた作者は、ペンシルバニア州ハルスバーグの環境保護局へ出掛けました。そこではなんとか環境保護局局長との面会が叶いました。

 そして作者は「ペンシルバニア州でも大規模なガス掘削が始まろうとしていますが、我々は汚染が飲料水に悪影響を及ぼすことを示す飲み水の分析結果を持っていますので、一度良く検討して下さい。」と切り出しました。

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 この提案に対し、局長は次のように答えました。「この地では重要なエネルギー源となるシェールガスを採掘する必要があります。もちろん環境に十分配慮したうえでやるので飲料水の汚染の問題は起こしません。」更に、一般論に置き換えて局長は言います。「そういう汚染問題は、飲料水を飲んでいる世界のどこでも起こっているし、1つ1つを細かく取り上げることはできない。高度に発達した経済社会では、これらの物事に対して完全な回答は得られません。最低ライン必要なことは、何事か起こったら、個々の問題が起こった時にきっちりと対処するということです。」これでは全く話になりません。

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 更に局長は言います。「君は、我々が知りたがっている問題に直面している。その通り、これは重要な問題です。我々は優秀な職員を抱えています。我々も住民の問題に大きな関心を持っており、何かあったらここへ連絡下さい。」と言うと、名刺を渡し部屋を出て行きました。

 そして、このインタビューの数か月後、ペンシルバニア州環境保護局は、歴史上初めて、350名の常勤職員を削減し、25%の予算削減を行ないました。

 皆さん、何か日本の公害問題と同じだと思いませんか。


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