若者キャリア観の変化(その2)-日本の高度成長を支えた組織

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 前回のblogで、日本の企業における新入社員の意識変化が多様化しつつあることを紹介しました。それによると、多様化する個人のキャリアに対する考え方は、表に示す4つに分けられることを示しました。すなわち、第1:階層的キャリア、第2:専門的キャリア、第3:スパイラル・キャリア、第4:変動的キャリアです。

 今回は、第1の「階層的キャリア」と第2の「専門的キャリア」を取り上げます。この2つのキャリアを一緒に取り上げる理由ですが、これらは、戦後の日本の高度経済成長時代および1990年前後のバブル経済崩壊からの組織再編時代といった、日本の比較的古い時代における典型的なキャリアパターンと類似しているからです。

 まず、第一の階層的キャリアを見てみます。日本の企業は企業内部での人材育成を前提としており、新卒採用を基礎とした長期雇用は必要不可欠でした。

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 そして、終身雇用制度や年功序列制度は、日本的経営の大きな特徴となりましたが、これを支えたのがタテ型意識をベースとするピラミッド型組織です。このピラミッド型組織は、戦後の日本の経済成長と伴に大きな発展を遂げました。

 「階層的キャリア」に当てはまる人々は、図のピラミッド型の組織構造の中で、自身の相対的な地位を高め、責任の範囲を拡大し、影響力を高めることを志します。この志向が強い人は、いかに着実に組織や社会の「タテ」の段階を上って行くかがキャリア成功を判断する基準となります。

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 この階層的キャリアを対象とする場合、多くの会話は「Aさんのキャリアは成功しているよね。なぜなら、Aさんは同期で一番に部長に昇進したのだから」となります。そしてこの組織のミッションは、「上からの指示命令をそのまま確実に行う」ことです。「何も考えないで、言われたことをやる」、「考えない人をつくる考えない組織」なのです。



 一方、第2の「専門的キャリア」は、1990年のバブル経済崩壊後の企業における組織再編時に強調された考え方でした。例えば、トヨタ自動車は1990年代後半から2000年初頭にかけて「PR021」と呼ぶ大規模な人事改革を行ないました。この標語は人材のプロフェッショナル化を追求する人事方針を意味していました。

 これを機に、トヨタは原則として従業員の採用時に希望の配属先を確認し、入社後の10年間は希望の配属先で部門の専門性を養う人材育成に変更しました。

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 多くの企業でマネージャー職とスタッフ(専門)職とのコース別人事が導入されたのもこの時期でした。20世紀の変わり目に「新しいキャリア」といえば、ここでいう専門的キャリアが中心だったのです。

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 この「専門的キャリア」に対応する組織が、この時期にもてはやされた「フラット型=プロジェクト型」組織に相当します。この組織はムダを排除し、短期的に利益を稼ぎ出す商品開発プロジェクトや営業プロジェクトには確かになじみます。しかし、その企業が育んできた組織風土や価値観を浸透させ、人材を長期的に育成することが難しくなると指摘されていました。





 しかし、キャッチアップの終焉や急速なグローバル化といった最近の外部環境の変化は、今回紹介した階層的キャリアや専門的キャリアでは解決できないいくつかの問題を浮き彫りにしているように思えますが、皆さんどう思われますか。




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